1. 目 的
天敵は化学農薬に比べ,また多様な環境を持つ日本では北ヨーロッパに比べ,さまざまな要因による防除効果のふれが非常に大きいため,天敵の普及のためには事例情報の蓄積と利用者に対する情報・アドバイスの提供を行うシステムを作成することが最も効果的であると考えられる。そこで,天敵利用および情報システムの専門家で構成されるワーキンググループを組織し,天敵利用事例を天敵カルテとして集積・利用するシステムの開発とその利用・普及を図る。農業研究センターはこのうちのシステム開発を担当する。
本年度は,天敵カルテの保存方法について検討し,WWWから情報を入力・検索するためのシステムを作成した。
2. 方 法
天敵カルテシステムの存在が,天敵の普及の足かせにならないために特定の市販ソフトに依存しないようにシステムを構成しなければならない。このため,以下のようなソフトウエアを利用して初期バージョンを開発した。
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オペレーティング・システム: Linux
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データベース管理システム: PostgreSQL
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WWWサーバ: Apache
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サーバ・サイド・スクリプト: PHP3
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その他: perl, qmail(SMTP), Namazu(全文検索), Chasen(Namazuが利用), MHonArc(電子メールをHTMLに変換), cron(定期実行)
3. 結果の概要
カルテの質を保証するとともに悪質な記入者による悪戯を排除するために,レフェリーを導入した。システムの主要部分は,10個のスクリプト(約150KB)であり,記入者登録とカルテ記入者・レフェリー・代理記入者・管理者のユーザグループ別のサブシステムとからなる。
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カルテ記入者登録サブシステム: 天敵カルテの記入者を登録するシステム。悪質なユーザによる悪戯をできるだけ排除できるようになっている。
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カルテ記入サブシステム: カルテの作成が行える。記入途中でデータを保存できるようになっている。圃場カルテとしても利用できる可能性がある。
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レフェリー・サブシステム: 自分がレフェリーを担当する害虫名や作物名の変更・依頼されたカルテを調べて掲載の可否を決定する。
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代理記入作業者用サブシステム: 紙の天敵カルテ記入シートに記載した内容を,記入者に代わってシステムに登録する。実際の記入者をシステムに登録する。
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管理者用サブシステム: 登録ユーザのパスワードのリセット,ユーザグループ情報の変更および他の全てのことが行える。
システムの画面と構成図を示しておく。
図1 天敵カルテメインメニュー |
図2 カルテ記入画面 |
図3 天敵カルテシステムの構成 |
4. 今後の問題点と次年度以降の計画
問題点
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現在,テスト段階である。本年2月にβテストを行い。3月には中国農業試験場にてサービスを開始する。
- 複数のカルテを一度に登録するためのインターフェースがない。
次年度以降の計画
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複数のカルテの登録インターフェースの実装とシステム・ソースの公開
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関連データベースの実装と連携
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次期バージョンの設計開始
5. 結果の発表,活用等
木浦卓治ら (1999) 第9回天敵利用研究会要旨
天敵カルテシステム http://tenteki.cgk2.affrc.go.jp/