天敵普及のための情報蓄積・支援システム
[要約]日本における天敵普及のためのインフラ整備として,天敵の利用事例をカルテとして蓄積して,利用するための枠組み「天敵普及のための情報蓄積・支援システム(天敵カルテシステム)」を作った。システムにはWWWから利用できる,増殖ベースを指向している,失敗事例を重視している等の特徴がある。

農業研究センター・研究情報部・研究技術情報科, モデル開発研究室
中国農業試験場・地域基盤研究部・虫害研究室
大阪府立農林技術センター・環境部・病虫室
天敵カルテ企画幹事会 (http://tenteki.cgk2.affrc.go.jp/kanjikai.html)

連絡先 0298-38-8975
部会名 情報研究
生産環境
専門 情報処理
作物虫害
対象 害虫 分類 普及

[背景・ねらい]

日本における天敵利用は北ヨーロッパほど普及していない。様々な要因により,天敵が十分な能力を発揮できていないことが一因であると思われている。従って,数少ない利用事例を効率的に収集・蓄積するとともに,利用者が自分の条件に近い事例を参照できるようになれば,天敵の普及が促進される。そこで,天敵の利用事例をカルテとして収集・蓄積・利用するため「天敵普及のための情報蓄積・支援システム(天敵カルテシステム)」を開発し,その利用・普及を図る。

[成果の内容・特徴]

天敵カルテ企画幹事会は,都道府県等10名・大学4名・日本植物防疫協会1名・民間企業2名・農林水産省4名(計21名)の非営利組織として存在しており,電子メールを活用することにより随時情報を交換しながら作業を行ってきた。その成果としての天敵カルテシステムはプログラムの名称ではなく、専門家や普及員や農家を含む枠組みであり、以下の特徴を持つ。

  1. 天敵カルテ情報収集
  2. 成功事例はもとより失敗事例も重視
  3. カルテ情報提供者が受ける便宜
  4. カルテの質を保証
  5. 各種資料との連携
  6. 柔軟な検索システム
  7. プログラムは多くのコンピュータで動く
  8. プログラムが動く環境は安価
  9. 天敵カルテ情報やシステムの利用が安価
  10. システムの改変に対価を求めない

[成果の活用面・留意点]

天敵カルテシステムは完成されたシステムではない。本システムは天敵普及のための枠組みを提供するのみであるが,情報をユーザ間で共有することにより天敵利用の失敗の繰り返しが減り,天敵の普及に貢献できる。少しでも多くの事例を本システムで共有することができるように参加をお願いしたい。また,システムの改良は誰でも行えるようになっているので,より良いシステムを開発することも可能である。

[具体的データ]

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図1 カルテ記入画面
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図2 カルテ登録の流れ
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図3 天敵カルテシステムの構成

[その他]

研究課題名: 天敵カルテシステムの開発
予算区分: 経常
研究期間: 平成11年度(平成11年〜14年)
研究担当者: 農業研究センター・研究情報部・研究技術情報科, モデル開発研究室
中国農業試験場・地域基盤研究部・虫害研究室
大阪府立農林技術センター・環境部・病虫室
天敵カルテ企画幹事会 (http://tenteki.cgk2.affrc.go.jp/kanjikai.html)計(21名)
発表論文等:

(1) 木浦卓治ら(1999)第9回天敵利用研究会要旨
(2) 渡邊朋也ら(1999)第9回天敵利用研究会要旨
(3) 田中寛(1999)第4回農林害虫防除研究会報告
(4) 田中寛(1999)農耕と園芸8月号
(5) 田中寛(1999)日植防シンポジウム「生物農薬:その現状と利用」要旨
(6) 矢野栄二(2000)トーメン農薬ガイド94(印刷中)
(7) 大野和朗(2000)今月の農業1月号(印刷中)

URL: http://tenteki.cgk2.affrc.go.jp/