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[IPM:57] 笠岡シンポ報告



皆様

先日ご案内いたしました,笠岡の天敵利用型農法のシンポジュウムについて
永井氏よりご報告がありましたので以下に
掲載いたします。

関係者の皆様ご苦労様でした。

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  先に,MLで御案内いただきました笠岡市での天敵利用型農法ナスの生産推進大会を
無事開催でき,岡山県内だけでなく県外からも多数の御参加をいただきましたこと,
この場をお借りしまして,お礼申し上げます。なお,この推進大会の概要をお知らせし,
お礼とさせていただきます。
  
   (1)笠岡湾干拓地におけるナス栽培経過(笠岡市農協)                    
    ・平成5年に促成栽培が、平成9年に露地栽培が開始された。
     ・露地栽培では風害防止用のソルゴーでナスを囲う必要があり、試作の平成9年には減農
      薬栽培でも品質の高いものが生産された。
     ・平成10年以降、天敵利用の減農薬栽培が7戸の農家で本格的に開始された。
    (2)笠岡湾干拓地における「土着天敵」の利用とナス害虫の総合防除
                     技術普及課:専門技術員(病害虫)伊達寛敬氏
     ・土着天敵利用による笠岡湾干拓地露地ナスの減農薬栽培の背景
        平成9年に風害防止用ソルゴーの囲い栽培で減農薬栽培ができ、果実品質もよかった。
        減農薬栽培の商品を望む市場があり、普通栽培より品質が若干劣っても出荷できる。
        消費者には減農薬栽培の商品が提供でき、農家は農薬散布回数が減り省力化が図れる。
     ・笠岡湾干拓地における土着天敵利用
        天敵増殖及び風害防止用にソルゴーで圃場を囲いナスを栽培している。
        天敵(ヒメハナカメムシ類)に悪影響の少ない農薬を選択している。
        発生病害虫に対応した最小限の農薬散布を実施している。
    (3)パネルディスカッション「天敵利用農法の定着化について」
                             コーディネーター:技術普及課 専門技術員(野菜)岡和義氏
     ・土着天敵利用技術について(農試:永井一哉)
          笠岡湾干拓地でのソルゴー囲い栽培のように各地に適した技術によって、土着天敵の利
       用ができると考える。
     ・減農薬栽培への挑戦(JA笠岡市ナス生産者:岡田忠氏)
          今後とも消費者に安全な食材を提供したい。
     ・付加価値商材の取扱方法(岡山経済連:渋鍬正巳氏)
          付加価値商材の取り扱いは、集積性や迅速な代金決済など優れた機能を持つ卸売市場
       での販売もよいのではないか。
     ・量販店ニーズへの対策(備後青果:佐藤雅彰氏)
          安全な減農薬農産物を、安く売ることで勝負する。
       減農薬農産物でも売れる価格(生産費)を考える必要がある。
     ・21世紀物流への取り組み(マルマツ:濱野満氏)
          流通コストの削減をめざし、流通の簡素化(粗選果による包装容器の省略など)に努
       めている。
     ・消費者の立場からの提案(生協ひろしま:岡本氏)
          販売物は無農薬を原則とはしていない。
          消費者には真実を伝える。
          価格の決め手は、安全に加え「味」である。
     質疑応答
      ・生産者の感覚として、化学農薬を控えることで、病害虫被害の怖さはないか
        解答(岡田):生産者はやはり怖い。的確な病害虫のモニタリングが必要
      ・ミナミキイロアザミウマ以外の害虫,例えばハスモンヨトウの対策はどうか
        解答(永井):アシナガバチ等の天敵がいる。コテツフロアブルでも防除できる。
      ・今後、天敵を利用し生産した農産物が付加価値品としての地位確立は可能かどうか
        解答(流通):抽象的イメージではなく、「おいしい」等の具体的アピール材料が必要
            (技術):今後全ての農産物が天敵利用できるとはかぎらないが、可能性はある。
                      露地ナスは有望な品目である。
    (4)特別講演
       「天敵の働きを基幹とした総合的害虫管理(IPM)岡山大学教授:中筋房夫先生
      ・IPMでは天敵の持つ害虫抑制能力を基礎におく。
      ・主役の天敵に影響を及ぼさない化学的、物理的防除等との組み合わせが大切である。
      ・今後のIPMには、きめ細かな地域発生予察と農家自身ができるモニタリング技術の開
      発が重要である。

(2日目)現地視察
干拓地で露地ナスの減農薬栽培を行っている2戸の農家を訪問し,
圃場を見せていただきながら,減農薬栽培を行った感想を聞いて
みました。訪問した農家は船尾さん(露地ナス栽培面積15a)
と岡田さん(同10a)です。
1)船尾さん
 台風の被害が比較的少なく(防風ソルゴ−の効果だけでなく,
 風向きに対する畝の向きが,偶々良かったため)11月上旬まで
 出荷しました。昨年はチャノホコリダニの被害が多発しました
 が,今年はアプロ−ド(2回)とコテツ(1回,ミナミキイロと
 の同時防除)で被害が減少しました。今年,問題になった害虫は
 メクラガメでDDVPの散布(2回)で防除しました。「問題点とし
 て殺虫剤散布時期の判断が難しく,モニタリングが今後の課題で
 ある」とのことでした。
  
2)岡田さん
 台風の被害と低温に弱い台木品種を用いたため,10月に栽培中断。
 問題となった害虫は船尾さん同様チャノホコリダニとメクラガメ
 で,アプロ−ド(2回)とDDVP(1回)の散布が行われました。
 岡田さんの感想として「農家側からみると農薬散布が少なくて
 済み省力化が図れる利点がある」とのことでした。

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以上です。

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三浦 一芸(みうら かずき)
農林水産省中国農業試験場
虫害研究室
(広島大学大学院生物圏科学研究科併任)
〒721-8514
福山市西深津町6-12-1
Kazuki MIURA
Laboratory of Insect Pest Control
Chugoku National Agricultural Experiment Station
Fukuyama 721-8514, JAPAN
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