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[IPM:213] Re212 加藤209・211 トマトサビダニ
加藤さん,みなさん
Cc大林さん
羽曳野田中寛です。
/本年5月31日に農水省農産園芸局・植物防疫全国協議会共催の
平成12年度第6回農作物病害虫防除フォーラムでトマトサビダニの
ことを書いたので(6ページ),ちょうど同じ質問があった東京都農試
小笠原の大林隆司さんと加藤さんあて,別途,原稿(Word2000)を
添付ファイルで送信します。IPMMLあて直接送信することも考えた
のですが,フォーラム主催者の了解を取っていないので,DMに
しておきます。添付ファイルが開けないようであればお知らせください。
その場合はファックスor郵送します。なお,IPMMLのメンバーで
他にご希望の方は田中あてDMで請求ください。
/トマトサビダニはトマトにおける天敵を用いたIPMの最後の難問で
あるにもかかわらず,残念ながら日本での防除研究はほとんど
進んでいないのが現状です。上記要旨も私自身のいくつかの薬剤
防除効果試験に海外の情報を付け加えた程度にすぎません。
/ただ,上記フォーラムをきっかけに,あらためてトマトサビダニの
生態と防除方法を明らかにする必要を感じたので(静岡県病害虫
防除所の池田二三高さんの強いお勧めもあって・・・),この数年,
トマトサビダニで悩んでいる大阪府北部中山間地,豊能町の農家
(うちの試験場から1時間半かかる!)において,6月から10日に
1回の間隔で調査と防除試験を行っています。詳しくは調査・試験が
終了した後にとりまとめて報告するつもりですが,これまでに
わかったことを手短に記しておきます。
(1)ケルセン乳剤は非常によく効くが(加藤さん,HPを見ましたが,
トマトではオサダンの登録がないので注意してください),生長
したトマトでは(1株あたり1リットルくらい,十二分量を散布しても)
散布ムラがあるので,薬のかからなかった茎や葉で増えた虫に
よって2週間くらいで密度が回復する。
(2)横への広がりは予想よりずっと遅い。トマトサビダニはまず
下部の茎や葉で増殖し,主として茎を伝って上に登るとともに,
徐々に茎に近い葉から広がってゆく。茎を伝った上昇は速いが,
葉から葉への伝搬は遅い。農家の協力を得て,下葉の枯れ
上がりと茎の褐変を目印に発生株に赤リボンを付けてもらって
いて,その周囲の株を調査しているが,隣の株で多発する
までには2週間以上かかる。スポット散布(発生株とその周囲
5株程度)を続けている場合は6週間経過しても,(最初の
発生株では上記のように2週間程度で密度が回復するが)
隣の株では多発していない。
(3)ハウス内での発生は飛び火状。さまざまなサビダニで
空気伝搬(むちゃくちゃ軽いので,空気の流れに簡単に
乗ることができる)することがわかっているが,トマトサビダニ
でも同様。 ごくわずかの虫が侵入し,数週間かかって
増殖し,下葉の枯れ上がりと茎の褐変が生じると考えられる。
(4)ルーペ定点観測による発生予察は事実上無理。ハウス
内で系統的に選んだ80株において茎の下部,中部,上部,
下位葉,中位葉,生長点を観察し続けているが,全くゼロが
続いている。農家の作業中の発見のほうがずっとずっと早い。
(5)本年は未確認であるが,昨年はサビダニ多発時に
コハリダニ類などの天敵が多く見られ(要旨参照),
その後サビダニが激減した。しかし,その時点では
すでにトマトにかなりの被害が見られるので,自然発生の
天敵をアテにするわけにはいかない。アメリカでは
コハリダニ類やナガモチヒシダニの放飼による防除が
試みられているが,実用には至っていないようである。
実際,不器用な田中がコハリダニを面相筆で釣り上げると,
ほぼ百発百中で殺してしまう(笑)ほどで,あまりにも
小さすぎて,商品化にはかなりの根性が必要。注---
ほぼ同じ大きさのサビダニは動作がのろいのでけっこう
生きたまま(爆)釣り上がるが,コハリダニは激しく動く
ので,ついついつぶしてしまう,というワケ。
(6)・・・ということで,現時点での最良の対策は,作業中に
下葉の枯れ上がりと茎下部の褐変を目ざとく(笑)発見し,
スポット散布を続けること。ハウス内数か所でほぼ同時に
見られた場合は一度全面散布し,その後2週間間隔で
被害株とその周囲4〜5株を対象にスポット散布を続ける
(4〜5か所程度であれば,背負式動力噴霧機を常備して
おけば薬液調合も含めて15分で完了する)。ケルセンは
チリカブリダニを除き,マルハナバチや他の天敵に与える
悪影響が小さいので,スポット散布方式は案外うまく行く。
(7)スポット散布はこれまでも推奨されてきたが,具体的に
そのようにやればいいか,明らかでなかった。もちろん,
他の悪条件(風がよく吹くなど)が重なるとスポット散布
方式はうまくいかない可能性があるが,2週間間隔,
周辺4〜5株散布,という目安が今年できたので,
現時点ではとりあえずこの方式で対応するのがベスト
かと思われる。もっと生態が明らかになってくれば,
もうちょっと気のきいたアイデアが出るかもしれないので,
各都道府県担当者の調査・試験・情報公開をお願い
したい(大林さんもよろしくね!)。サビダニ類はみんな
手を付けたがらないので,何をやっても発見になるから
面白いよ!
(8)加藤さん,これが現状なので,この程度でかんべん
してください。逆に,加藤農園でこんなことがあった,
ということを次々にIPMMLあて知らせてもらえれば,
みんなの想像力と創造力を刺激することになるので,
ぜひよろしくお願いします。なお,役人的な言い方で
ホント申しわけないけど,農薬登録には十分注意して
くださいね。刺激的な今回のIPMMLあての投稿,
あらためて感謝! とりあえず,HPのサビダニの部分を
切り取って投稿(IPMMLあてメールを出すこと)して
もらえれば嬉しいのですが・・・。
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田中 寛 (たなか ひろし)
大阪府立農林技術センター病虫室
〒583-0862 羽曳野市尺度442
Phone: 0729-58-6551(内232)
Fax: 0729-56-9691
E-mail: hiroshi-habikino.tanaka@nifty.ne.jp
Business page: http://homepage2.nifty.com/hiroshi-habikino/
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