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[IPM:278] Re: オンシツコナジラミ増えてます。



加藤さん,皆さん

宮城園試,増田です。
ここのところ出張等でメールを読み流していましたが,微生物農薬と殺菌剤のことが
取り上げられていましたので,わかる範囲でお答えしたいと思います。
ただし,私は微生物殺虫剤しか試験をしていないので,微生物殺菌剤がどの様に殺菌
効果(あるいは静菌効果でしょうか?)を示すのかなどについては,よくわかりませ
ん。あしからず。
ボトキラーは枯草菌バチルス・ズブチルスという芽胞細菌です。BT剤の仲間と考え
てよろしいかと思います。
芽胞細菌が作る芽胞は環境の変化に強く,温湿度の変化や熱に対しても高い耐久性を
持つといわれています。
おそらく,芽胞自身は殺菌剤にもかなり強いものと思われます。
でも,いわゆる細菌病(斑点細菌病など)に使用される薬剤(マイシン剤や銅剤)に
は影響が大きいものもあると考えていいでしょう。
また,ボトキラーの効果は病原菌との競合によって後から来た病原菌を繁殖させない
ことによるらしいので,葉の上などでバチルス・ズブチルスが栄養繁殖(条件がいい
のであまり芽胞を作らず,細胞分裂でどんどん増殖する状態)を行っていないと効果
が期待できないのではないかと思います。
そうなると,細菌病に使用される薬剤は基本的に影響があり,また糸状菌病の殺菌剤
も抗菌スペクトラムの広いダコニールやキャプタン,ジマンダイセン,ベンレートな
どは影響があるかもしれません。
ここらあたりはメーカーさんに確認を取った方がいいと思います。

僕なりに考えた使用法は;
ボトキラーを散布した後に,灰カビ以外の病害が発生した場合は,とにかくその病害
を対象にもっとも効果が期待できる殺菌剤で防除を行う(バチルスに影響があっても
なくても)。
影響のない殺菌剤を散布した場合は,そのままほっておいてよい(トリフミンなどの
昔EBI剤といっていた葉カビ剤はほとんど影響ないと思います。)
影響のある殺菌剤を散布した場合は,その病害がおさまった段階でその殺菌剤の散布
を止めれば芽胞として残ったバチルス・ズブチルスが発芽して再び灰カビを抑える。
ただし,植物体上でのバチルスの密度は低くなっていると考えられるので,ボトキ
ラーは再散布した方がよい。

こんなところでいかがでしょう。たぶん大きく間違ってはいないと思いますが。

話はちょっと変わりますが,昆虫病原糸状菌バーチシリウム・レカニ製剤(商品名
バータレック)がアブラムシの防除に登録されました。こちらは殺菌剤の影響が大き
いので,メーカーさんの資料やバイオロジカルコントロールの巻末に付いた付表など
を参考に剤の選択が必要です。
使用時の温度や湿度などの条件も結構制約があります。
うまく使えばよく効きますが,条件によっては全く効果が現れないこともあります。
病害防除との関係も微妙です(アブラムシに感染させるには高湿度と程良い温度が必
要であり,その条件は病害の発生と重なる部分が多い)。
付け足しでした。


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増田 俊雄
宮城県園芸試験場環境部
en-envir@sh.comminet.or.jp
TEL:022-383-8132  FAX:022-383-9907
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