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[IPM:372] Re: 捕食性カメムシについて



新倉さん
IPMーMLのみなさん

九大の高木です.


>IPMーMLのみなさんへ
>
> 初めて投降します、新倉@ニイクラファームと申します。
>
> 現在、アザミウマの天敵として登録されている捕食性カメムシですが、
>非常に広食性でアザミウマの他にアブラムシ、ダニ、あるいはある種のガの
>仲間の卵なども常食すると本で見ました。が、実際に登録されている
>アザミウマ以外でのデータと言うか実績と言うものはあるのでしょうか?
> あるとすれば、それは天敵と活用して大丈夫なのでしょうか?

11月30日〜12月1日に静岡市で開催される天敵利用研究会で「生物的防除の常識と非 
常識」という題で講演しようと思っていた内容に関連しますのでコメントします.

単食性あるいは狭食性の天敵はその害虫にしか効きませんが,多食性(=広食性)天 
敵はいろんな害虫にある程度効果があると思います.捕食性ハナカメムシの場合,ハ 
ナカメムシの種によって少しづづ異なるとは思いますが,好みの差こそあれいろんな 
ものを食べます.選好性は,アザミウマ>ハダニ>アブラムシの順で,アブラムシは 
大きくなると攻撃できないようです.また,厳密にいえば,ハダニやアブラムシの種 
によっては全くダメな場合もあるようです.
ハダニやアブラムシを食べるからといって,ハダニやアブラムシの防除がハナカメム 
シだけ完全だということではなく,発生の初期にある程度効果があるという位に考え 
ておけばよいでしょう.そもそも,天敵を「農薬」と同じような発想で使うのが間違 
いで,「天敵農薬」と呼ばずに「天敵資材」と呼ぼういう根本さんの提案に賛成で 
す.さらにいえば,天敵資材を化学農薬と同列に扱う現在の「登録制度」は非常に疑 
問です.
この害虫にはこの薬を撒いておけば総てOKというように,化学農薬のような訳にはい 
きませんが,捕食性ハナカメムシを導入しておけば,アザミウマだけでなくアブラム 
シやハダニの発生もある程度抑えられるでしょう.

> 現在、アブラムシやダニにはそれぞれの天敵が販売されていますが、
>このカメムシの仲間がこれだけの食性があると天敵を使う側としては
>コスト面でも管理面でも非常にたすかるのですが・・。

アザミウマだけが問題でアブラムシやハダニはそれ程出ないという場合は,ハナカメ 
ムシだけで十分でしょうが,増え始めるとハナカメムシだけではちょっと無理かも・ 
・・.アザミウマにしても増えすぎてしまえば天敵ではお手上げです.

> 又、逆に他の天敵と併用した際は、この食性が逆に他の天敵に害に
>なる場合などはあるのでしょうか?

複数種の天敵を使って,それらが競合し逆効果にならないかという問題は,「ギルド 
内捕食(intraguild predation)」というキーワードで生物的防除関係の国際誌をに 
ぎわしています.まだ研究され始められたばかりの話題で,一般的な結論は出ていま 
せんが,「悪影響がある」という報告が多いようです.しかし,悪影響があった場合 
は論文になるが,問題なければ別に気にしてないだけで,一般的には天敵に対する化 
学農薬の悪影響ほどではないと,ぼく個人として考えています.どういう組み合わせ 
で悪影響が問題になるのか明らかにしていくことは,面白い研究テーマです(研究者 
として).



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九州大学大学院農学研究院生物的防除学講座
高木 正見
TEL 092-642-3035 FAX 092-642-3040
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