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[IPM:418] IPM の普及について



IPMMLの皆様はじめまして。
何度か名前が出ている静岡県のサギサカと申します。
傍観者を決め込んでいましたが熱心な加藤さんに引っ張り込まれて
参加させて頂きます。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

流通の立場にいる者として、IPMの普及について感じたことを述べさせて
頂きます。
私の会社では農薬などの販売をしており、商品の中にIPMマテリアル
が含まれているといった状況です。
古くからいわゆる有用土壌微生物と称す資材を扱い、今ではIPMの範疇
に入る資材の数は細かく分ければ50アイテムほどに増えてきました。
その中には天敵はもちろんのこと、トラップ、フェロモン、微生物殺菌剤
、同殺虫剤などで、数だけはたくさんありますが、なかなか現場への本格
的な普及が成されていないのが現状です。
天敵利用研究会で静岡県柑橘試験場の古橋さんがおっしゃった
「曇りガラスを手で拭いて」状態の閉塞感を感じていたところに天敵カル
テとIPMMLを知り、全国の頭脳が結集されていて、かつ開かれた環境に
感動すら覚えました。

そんな折に天敵利用研究会で高知県の成功事例を聞き、どうして普及
したんだろう?ということを考えました。
IPMMLの趣旨とは少しかけ離れるかもしれませんがご容赦ください。

私は天敵利用の優位点と不利な点を以下のように考えています。
静岡茶試/小澤さんの受け売りですが・・・

1. 優位な点
A) 薬剤抵抗性がつかない
B) リサージェンスの問題がない
C) 作物に対する残留問題がない(極めて少ない)
D) 散布者が被曝しない
E) 薬剤散布労力が少ない(主に天敵昆虫)
F) 消費者、市場に対してイメージが良い(PRは必要)
G) ハウス内の観察をするようになる(手間がかかる面もある)
H) 一度技術が確立すれば持続的に利用できる

2. 不利な点
A) 薬剤と比べて効果が不安定なことがある
B) 導入に際してチェックすべき事項が多い(温湿度、薬剤の影響、害虫密度)
C) ウィルス対策や対象外病害虫対策に問題がある
D) コストがかかる(対薬剤費という面において)
E) 害虫多発生時に対応ができない
F) 常に神経を使う(優位面でもあるが)
G) 環境整備などが必要(優位面でもある)
H) 生産物の評価が高くない(今後変化する可能性は大いにある)

釈迦に説法でしたが・・・、結局使う側にしてみたら
「手間がかかる(面倒)」「それほど効かない」「儲からない(金がかかる)」
といったことが導入のネックになっていると思います。
しかし実際にこれらの不利な点ってウィルス以外は全部解決できる
ことですよね。
実際かとうさんのように実用されている生産者の方もたくさんいるし。

現場で天敵を勧める際によく聞かれるセリフ
「農薬のみの防除で問題がない」
「農薬が使えなくなってしまう」
「いいことはわかっているけどあえて導入する理由がない」
特に、歴史があって比較的年配の方が多いところではこんな反応
がよく返ってきます。
しかし、どこの産地でもIPMを導入する理由は充分にあるのでは
ないでしょうか?
上記の優位点に加えて、IPMで生産物の付加価値を上げることが
産地や経営農家としての生き残りの方法になるとすれば、積極的
にIPMを取り入れることは重要と考えます。

こういう中で必要だと思うのは、強い熱意を持って生産者に天敵
利用を勧める指導者と思います。
何のためにIPMを導入するのか。産地として生き残るために将来を
見据えてIPMの技術を普及するという決意みたいなものが高知県の
指導者の皆さんには強くあったのではないでしょうか?

「石の上にも3年」ではないですが、研究者の方の研究成果と供給元
企業の努力と実際に天敵を利用する生産者を結ぶパイプ役として、
JAの指導員や農業改良普及員の皆さん、そして私どものような流通
の人間が熱意を持ってIPMの必要性を辛抱強く説いていくことが必要
と感じた次第です。


さざんかの宿を受けて
「どんなに困難でくじけそうでも、信じることさ必ず最後にIPM〜」 
by KAN(古すぎ(笑))

失礼しました・・・


☆Tetsushi.Sagisaka
      tetsu_sagisaka@savegreen.co.jp
            http://www.savegreen.co.jp☆