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[IPM:617] Re 小林597IPMコンセプト
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- Subject: [IPM:617] Re 小林597IPMコンセプト
- From: hiroshi-habikino.tanaka@nifty.ne.jp
- Date: Wed, 07 Feb 2001 15:43:34 +0900
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小林さん,大野さん,IPMMLのみなさん
羽曳野田中寛です。
/だいぶん前(1月20日)に小林さん597が提出し,大野さん598が
レスした「IPMコンセプトの整理」について,今ごろになって遅いけれど,
書いてみようと思います。ちょっと理屈っぽくなりますが,こういう
議論も必要かと・・・。私自身も整理しきれていないので,歯切れが
悪くなっていますが,ご容赦ください。
/なお,削除してしまった人もいると思うので,末尾に小林597と
大野598を添付します。
At 11:06 01/01/20 +0900, 小林597 wrote:
>IPMは、昔言われていた総合防除とは違うわけですよね。
$$$ 言葉は変わったけれど,中身は段階的に変わってきているので,
全く違うわけではありません。定義の問題になってしまいます。
>(2)総合防除
>・・・
>○病害虫発生程度の確認は必須でない。(歴防除もあり)
$$$ 状況によると思います。
>(6)無農薬栽培、有機栽培等
>○技術的に確立されていない。
$$$ 栽培現場は多様なので,誰もができる技術が確立されて
いないだけで,個々の圃場では確立されている場合があります。
>で、何が言いたいかというと、IPMを謳う場合、防除には必ず根拠が必要になる
>のではないかということです。現在の幼虫密度がこれくらいだからとか、去年の
>発生量がこれくらいだったからとか、いう根拠です。
$$$ これも,(栽培現場が多様なので)圃場によって,季節によって
要防除水準が非常に異なる場合があることを考慮しなければ
なりません。一律のマニュアル的やり方がうまく行かないのは,
天敵でいやというほど痛感していることです。
>それがきちんと整理されていなければ、いままでの総合防除と変わらないこと
>になるのではないかなあと思うのです。
$$$ 賛成します。
>たとえば、比較的病害虫の少ないさといもの場合、ハダニは1葉あたり何千頭
>いても実害なしとか、ハスモンヨトウなら1葉5頭で要防除とか防除のメニュー
>を整備します。そして、もしその水準を超えなければ無農薬栽培でも目標収量を
>確保できるとします。そうなれば、天敵もフェロモンディスペンサーも使わない
>としても、さといもの IPMは完成したといっていいのでしょうか。
$$$ 田中はそれでいいと考えています。結果がよければ(栽培
期間中にうまく病害虫をだまし通すことができれば)それでいい
のではないかと・・・。
$$$ ただ,以上の田中の意見は,ヘタをすると基準が何もなくなり,
「黙って座ればピタリと当たる」になってしまうのが問題です。
IPMがわかりにくいのは,理論はたしかにそのとおりだし,
その理論がなければ私たちはモノを考えられないわけだけど,
多様性がからむと「現実は理論と違う」と言われてしまうことが
一因だと思います。誰がやってもすごくうまく行くIPM技術は
多様性を無視できるほど強烈だけど,それはむしろ少数派でしょう。
$$$ だから,回り道のようだけど,並みの技術を組み合わせた
IPMを実際に普及するためには,医学の症例にあたる事例を
(失敗事例が大事です)たくさん作って,全体のバラツキの
程度を把握しながら,一歩一歩進めざるを得ないと思います。
そして,それを考えに入れた上で,IPMをわかりやすく説明する。
$$$ IPMを謳う場合の防除の根拠を作るにあたって,お題目だと
言われないためには,基準となる数字を示す一方で(これは
本当に大事だが,全てでない),多様性・バラツキをフォロー
していくバランス感覚(綱渡り?(笑))が必要でしょうね。
----------小林597
先日、普及員の人から質問されて、IPMのコンセプトをまとめた資料を作りまし
た。ちょっと行き詰まったので、お知恵をお借りしたいと思います。
IPMは、昔言われていた総合防除とは違うわけですよね。
防除のコンセプトを段階的に考えてみると。
(1)防除歴に従った暦防除
過去の経験や試験成績をもとに、時期別あるいは生育段階別に防除薬剤を決め
ておいて、それに従って防除する。
(2)総合防除
○単に薬剤防除とか耕種的な防除方法を組み合わせて防除する。
○病害虫発生程度の確認は必須でない。(歴防除もあり)
(3)IPM
○様々な防除方法を用意し、病害虫の発生程度に応じて合理的に防除を行う。
(原則として歴防除の否定)
○天敵等の使用義務はないが、主要な防除手段と位置づけ、補足的に耕種的防除
や薬剤防除を用いるのが主流となっている。
○農家のメリットは散布作業の軽減。
○農家のデメリットは病害虫リスクの拡大、情報体制整備、診断技術力向上など。
(4)持続農業法に基づく認定農業者
○施肥、病害虫防除において、化学合成物質の投入を軽減する技術の導入義務が
生じる。
○化学合成農薬の量的な削減義務はない。
○農家のメリットは認定農業者の肩書きによる有利販売。
○農家のデメリットは技術導入義務。
(5)改正JAS法に基づく減農薬栽培(特別栽培米等)
○既存の農薬使用回数(成分数×処理回数)を半減する。
○農家のメリットはJASに基づく有利販売。
○農家のデメリットは農薬削減による病害虫リスク拡大。
○使用回数が超えた場合は、通常の作物として出荷可能。
(6)無農薬栽培、有機栽培等
○技術的に確立されていない。
○現在のところ、契約栽培など特殊需要に限られている。
○行政の対応は将来の課題。
で、何が言いたいかというと、IPMを謳う場合、防除には必ず根拠が必要になる
のではないかということです。現在の幼虫密度がこれくらいだからとか、去年の
発生量がこれくらいだったからとか、いう根拠です。
それがきちんと整理されていなければ、いままでの総合防除と変わらないこと
になるのではないかなあと思うのです。
逆に、根拠がきれいに整理できたら今までどおりの防除でもIPMなのか?
謎は深まります。
暦ではなく、メニューによる防除体系の確立ということでしょうか。
たとえば、比較的病害虫の少ないさといもの場合、ハダニは1葉あたり何千頭
いても実害なしとか、ハスモンヨトウなら1葉5頭で要防除とか防除のメニュー
を整備します。そして、もしその水準を超えなければ無農薬栽培でも目標収量を
確保できるとします。そうなれば、天敵もフェロモンディスペンサーも使わない
としても、さといもの IPMは完成したといっていいのでしょうか。
現場では、IPMと他の課題(上の表など)が錯綜していて、植防担当者ですら混
乱しています。
ご意見なり、考え方を教えていただければと思います。
-----------------大野598
小林様
試験センターの監督中の休みなので、後から改めて意見だしますが、混乱という
か曖
昧なのは、要防除密度などの数値が実態として出せないことです。現場で考えるとき、
こ
れくらいで農薬をかけるという密度は、極論すると農家それぞれで微妙にことなるも
のか
もしれないと思っています。
アザミウマで言うと、100葉に1頭幼虫がいるだけでもきっちり散布する模範
的化
学防除農家もいますし、50頭くらいで、防除する農家もいます。じゃあ〜現場の指
導を
どうするんだということですよね。 つづきは後で、送信します。
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田中 寛 (たなか ひろし)
大阪府立農林技術センター病虫室
(兼)大阪府立大学連携大学院
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