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[IPM:1423] Re: ハサミムシによる加害



河野 勝行様 皆様

 貴重な知見をご披露いただきましてありがとうございました。今後お世話になるこ
とがあるかと思いますが、宜しくお願いします。

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  埼玉県農林総合研究センター 
    生物機能担当  根本 久
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-----Original Message-----
From: KOHNO, Katsuyuki [mailto:kohno@affrc.go.jp]
Sent: Wednesday, July 28, 2004 2:08 PM
To: IPM@ml.affrc.go.jp
Subject: [IPM:1421] Re: ハサミムシによる加害

木村貴好様、根本 久様、皆様

初めて投稿いたします。
かつてハサミムシの生態をやっていたことがありますので、私にわかる範囲で
コメントさせていただきます。

根本さんご指摘のように、汎世界種であるオオハサミムシは捕食性天敵として
よく知られており、海外では捕食性天敵としての研究事例がいくつかあります。
私が現在調査しているキャベツ圃場でも、オオハサミムシが普通に見られています。

コブハサミムシはオオハサミムシとは異なり、山地の谷筋などを中心に棲息して
いる種で、他の昆虫を好んで捕食しますが、植物の花の花粉を好んで食べますし、
植物の若葉を食べることも稀ではありません。ただし、堅くなってしまった葉を
食べることはほとんど無いようです。
以前、私のところにナスの若葉を食べるハサミムシがいるということで、同定を
依頼されたことがありますが、それはコブハサミムシの幼虫でした。
コブハサミムシは山地の谷筋に密度が高いので、被害を受けたハクサイも平坦地
ではなく、谷筋で栽培されていたものではないかと想像します。

ハサミムシによる植物の加害の事例としては、ヨーロッパ原産のForficula
auriculariaがアメリカ大陸に侵入し、植物(詳細は忘れました)を加害するとい
うことで、園芸害虫として研究対象とされたことがあります。1970年代にカナダの
R. J. Lambによる論文が数編出ています。

また、果樹の果実がヒゲジロハサミムシによって被害を受けたという事例も国内で
数例聞いたことがあります。

私が知る限り、ハサミムシは基本的に雑食性だと思いますが、種によって捕食性の
傾向が強い種もありますし、食植性の傾向が強いものもあります。また、菌類を好
む種もありますし、腐ったものに集まる種もあります。

オオハサミムシは捕食性の傾向が極めて強い種だと思います。
コブハサミムシは捕食性と食植性の両方の性質を持つ種だと思います。すなわち、
ハサミムシ類に限った範囲では、食植性の傾向が強い種だと言えると思います。
ハマベハサミムシ、ヒゲジロハサミムシ、キアシ(コバネ)ハサミムシは生ゴミな
どに集まることが多いですが、食性はよくわかりません。おそらく雑食性だと思い
ます。
コヒゲジロハサミムシは日本本土では穀物倉庫などで発見されることが多いですが、
おそらく、穀物に発生している害虫を捕食しているのだと思います。
クギヌキハサミムシはハマキムシが巻いた葉の中で見つかることがよくあるので、
これもおそらく捕食性の傾向が強い種だと思います。
チビハサミムシやクロハサミムシは菌食性の傾向が極めて強い種だと思います。

コブハサミムシについては拙著もご参照ください。
・河野勝行(1984)コブハサミムシの特異な生活 —生活史戦略的視点から—.
遺伝 38 (10): 70-75
・Kohno,K.(1997) Possible Influences of Habitat Charasteristics on the
Evolution of Semelparity and Cannibalism in the Hump Earwig Anechura
harmandi. Researches on Population Ecology 39 (1): 11-16

中身の充実度はあまり高くありませんが、日本のハサミムシのホームページも作っ
ておりますので、ご笑覧ください。
http://cse.naro.affrc.go.jp/kohno/earwig/
自分自身で写真を撮るのは限界がありますので、ここに写真が載っていない種や、
載っていても、もっと良い写真があるぞ、ということであれば、ご提供いただける
と嬉しいです。

--
from  河野 勝行 (KOHNO, Katsuyuki)
      野菜茶業研究所・葉根菜研究部・虫害研究室
      〒514-2392 三重県安芸郡安濃町大字草生360
      Phone: 059-268-4643   Fax: 059-268-1339
      e-mail: kohno@affrc.go.jp


At 22:22 2004.7.8 +0900, HNemoto wrote:
>茨城白菜栽培組合
>  木村貴好 様
>
> ハサミムシ類はおっしゃるように雑食性で、コナガの捕食試験のため産卵された
ア
>ブラナ科野菜と共に容器に入れておくと、産卵植物ごと食べられているのを観察し
た
>ことがあります。私の場合はオオハサミムシでした。
>
>*****************************************
>      埼玉県農林総合研究センター 
>        生物機能担当  根本 久 
> *****************************************
>
>
>-----Original Message-----
>From: kimura [mailto:kimura@hakusai.co.jp]
>Sent: Thursday, July 08, 2004 7:45 PM
>To: IPM@ml.affrc.go.jp
>Subject: [IPM:1407] ハサミムシによる加害
>
>茨城白菜栽培組合の木村貴好と申します。
>ハクサイの契約栽培を年間行っておりまして、今は、長野・山梨が出荷産地で
>す。
>今年は雨が少ないためか害虫の発生も多く、防除を呼びかけております。
>
>ハサミムシはコナガなどの天敵と覚えておりましたので、こちらのメーリングリ
>ストに紹介させてください。
>
>長野県北相木村の畑で、道脇のハクサイに多くの食害痕を見つけたので、葉をめ
>くっていたのですが、時々ハサミムシが飛び出してきました。ああ、コナガを食
>べてくれてたんだなぁと思っていたのですが、あまりにも頻度が高いので、別の
>容器に入れて一日したら結構ハクサイを食べるのですね。
>見当がついたので翌日よく葉をめくって見てみると、一枚の葉に2匹くらいつい
>ているものもあり、一株で2-30匹採集できました。これらは品質にならないハク
>サイで、畑の縁にそって半分ぐらいは収穫不能でした。ただし畑の内部にはいな
>いようでした。
>
>分類の先生に診ていただいたら、コブハサミムシの幼虫と同定いただきました
>(大学施設の図書館でルーペ片手に分類図と取り組んでいたら、偶然教えていた
>だきました)。
>たしかに過去納品先よりハサミムシが多いという問い合わせがあり、確認せずに
>それは害虫を食べてくれる天敵でして、その働きに免じて・・・と返答してしま
>いましたが、誰が敵やら味方やらです。
>
>もともと雑食性でしょうから、大発生してハクサイ内部に入りこめばそこらを食
>べるのでしょうが、ほかハサミムシで加害される野菜はあるのでしょうか。
>天敵としてのハサミムシは別種のものなのでしょうか。
>ご存知の方がおりましたら、教えてください。
>それでは、また失礼いたします。
>
>
> _/_/木村 貴好_/_/
> (有)茨城白菜栽培組合
>http://www.hakusai.co.jp/
>    kimura@hakusai.co.jp
>茨城県猿島郡総和町磯部659
>  TEL 0280-92-0827
>  FAX 0280-92-1730
> _/_/_/_/_/_/_/_/