[Date Prev][Date Next][Thread Prev][Thread Next][Date Index][Thread Index]
[IPM:586] Re: 本多様 「木酢液はママレモンと同様の見方ですか？」
人見 浩様、皆様
大変難しい議論にはまってしまったような気がします。［IPM:577］で申し上げた
ように、「農薬として使用された場合の毒性や残留性の評価が行われていない化学物
質について、市販の農薬との優劣を安易に比較することは差し控えた方がよい」と思
います。このことは、「安全性」についても言えるでしょう。農薬と木酢液のどちら
が安全かは、判断できません。木酢液についての十分なデータがないからです。
木酢液を使って病害虫が減ったという記事は、農業関係の雑誌などに良く取り上げ
られています。これらの記事を注意深く読んでみると、木酢液で虫が死んだというよ
りも、植物自体がより成育旺盛になった、虫が付かなくなったという記述が多いよう
です。時には木酢液を使っても虫の種類によっては効果がなかった、という報告もあ
ります。また、木酢液を販売している業者の広告には、病害虫に対して防除効果があ
るとは書かれておらず、作物の体質改善に役立つとされているだけです。言ってみれ
ば「健康食品」のような物かも知れません。農業雑誌には、他にも様々な有機資材の
広告が掲載されており、それらを使えば農薬要らずの有機栽培が可能であると謳われ
ています。
「健康食品」は、医薬的な効能が謳われていない限り薬事法で取り締まられること
は無いと聞いています。同様に、木酢液を始めとする各種の有機資材についても「農
薬」としての効果が謳われていない限り、販売取り締まりの対象にはならないのだと
思います。さらに、農家が自宅で木酢液を精製して（精製キットが売られています！）
自分が生産する農作物に使用した場合、誰もそれをチェックすることはできませんね。
願わくば農家ご自身がそうして作った農作物を試食していただいて、健康上問題ない
ことを確認してから販売していただきたいと思うだけです。
なお、先述の農業雑誌を読んでいて気が付きましたが、木酢液にトウガラシの実や
タバコの吸殻を漬け込んで散布すると虫が付かなくなるという記事がありました。ト
ウガラシにはカプサイシンというアルカロイドが含まれておりこれが辛みの元となる
のですが、同時に防虫効果もあるようです。スーパーなどで売っている米櫃用虫よけ
剤の中身も、ただのトウガラシでした。タバコの吸殻からは当然ながらニコチンが溶
け出します。これは市販の農薬よりもはるかに毒性が強いので取り扱いは要注意です。
農家自家製の虫よけ技術にも、面白い物がある反面ちょっとこわい物もあるというこ
とです。
「合成洗剤」の場合と違って歯切れが悪くなって申し訳ありません。「合成洗剤の
害」については明らかなのではっきりと申し上げられましたが、「木酢液の害」につ
いては判然としません。病害虫の発生抑制効果についても事例的なものが多く、使用
する農家の力量によって効果が異なるようです。現時点では、木酢液の使用目的が作
物の体質改善にあり、その副次効果として病害虫の発生抑制が期待されている場合に
は、病害虫防除を主目的としている「農薬」との単純な比較は難しいと考えます。
どなたか他にご意見をお持ちでしたら、お聞かせ下さい。
本多健一郎＠農研センター
At 5:49 PM 1.1.16 +0900, 人見 浩 wrote:
>本多様 「木酢液はママレモンと同様の見方ですか？」
>
>那須の人見です。
>はじめて本多様にメールいたします。
>
>ママレモンの散布に対して、的確なご意見をお持ちで感激いたしました。
>
>メーリングリストの展開を拝見して
>普通一般ですと、そのままママレモンを
>普及させてしまおうとの議論に展開しがちです。
>
>しかし、本来の使用方法以外のものを農産物に散布するのは
>問題があります。
>本多様のご指摘の通り、それらの農産物の安全性や環境への影響は
>試験されませんので、わからないのです。
>
>では、現在、広く一般に使用されている「木酢液」は、いかがでしょうか？
>
>私の意見としては、
>農薬ではありませんので、ママレモンと同じ考えになります。
>つまり、農薬としてみなされないものを
>病害虫防除の目的で散布しています。
>
>農産物や環境への安全性を保証するデータはありません。
>
>農薬を広めようとの意見ととらえられると困りますが
>登録している農薬は、使用基準を遵守していれば、
>厚生省で安全性を保証しています。
>
>農薬と木酢液のどちらが安全なのでしょうか？
>
>----------------------------------------
>(有)那須インターネット利用研究倶楽部
> 代表取締役 人見 浩
>Email hitomi@nasuclub.co.jp
>http://www.nasuclub.co.jp
>〒325-0027 栃木県黒磯市共墾社87-35
>TEL 0287-60-5131 FAX 0287-60-5132
>----------------------------------------
------------------------------------------------------------
Ken-ichiro Honda
Lab. Entomology
National Agriculture Research Center
3-1-1 Kannondai, Tsukuba, Ibaraki 305-8666 JAPAN
TEL : 0298-38-8939
FAX : 0298-38-8837
e-mail: khonda@affrc.go.jp; khonda@narc.affrc.go.jp
Nifty: PGA01661
------------------------------------------------------------