[IPM:841] Re:オンシツツヤコバチ（代理投稿）

[Eizi Yano <yano@affrc.go.jp>]

唐沢様
三浦様
昔々オンシツツヤコバチの仕事をやっていました中央農業総合研究センターの矢野と
いいます。私のわかる範囲でお答えしたいと思います。

> IPM　ML皆さん
>    　　長野の唐沢です。
>
>    先日、韮崎のトマトハウス（周年栽培）を見学に行ったところ
>    葉の裏に黒い粒状の物を見かけたので、てっきり
>    「ツヤコバチ」を導入したんですか？と尋ねた所、
>    夏頃から自然発生したと言ってました。
>
>    「オンシツツヤコバチ」の卵に似ています。

この黒い粒状の「オンシツツヤコバチの卵」と呼ばれているのは、オンシツツヤコバ
チのカードに付着している長さ0.8ミリ位の黒い粒ではありませんか？これは卵では
なくオンシツツヤコバチに寄生されたコナジラミの幼虫の色（本来は乳白色）が黒く
なったもので、中にオンシツツヤコバチの蛹がいます。普通マミーと呼ばれます。オ
ンシツツヤコバチはコナジラミ幼虫の体内に産卵しますからコナジラミ幼虫を解剖し
ない限り見ることはできません。

>    「ツヤコバチ」自体は捕まえて確認できませんでしたが
>    葉を揺らすと０．５〜０．８ｍｍくらいの物が飛んでいます

これだけではなんともいえませんが、オンシツツヤコバチ成虫の体長は0.6ミリくら
いで、飛翔中は肉眼では何か細かいものが飛んでいるなという感じですから、オンシ
ツツヤコバチの成虫かもしれません。

>    「ツヤコバチ」かまたは同じような種類の天敵昆虫が
>    いるんでしょうか？
>    また、この手の物は自然発生することがあるんでしょうか？
>
>    ハウスの周りの環境は、山の谷あいでハウスの裏は
>    なだらかな林、前の方はサルが出るという事で長いも畑と
>    近くのゴルフ場の芝の生産畑でした。
>    周りは雑草の葛が生えているくらいです。

茨城県全域で行った日本植物防疫協会の調査でオンシツツヤコバチは夏から秋にかけ
て野外に普通に存在することがわかりました。ハウスの近くでなくても風で飛ばされ
て3キロ離れたところまで移動することもわかっています。オンシツツヤコバチが利
用しているオンシツコナジラミはたくさんの種類の雑草にもつきます。葛につくかど
うかはわかりません。それからコナジラミの幼虫が寄生されて黒くなっているとした
らオンシツツヤコバチに寄生された可能性が高いと思います。在来のよくいるヨコス
ジツヤコバチなどに寄生されても黒くはなりません。実物を見ていないので想像にな
りますが、野外の雑草や家庭菜園に発生したコナジラミに寄生していたものがトマト
ハウスに飛び込んで増えたのではないかと思います。