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[IPM:1226] Re: 書評




 気分をちょっと変えてみましょう。
 便乗して、書いてみました。

【書名】虫の名,貝の名,魚の名−和名にまつわる話題
【著者】青木淳一・奥谷喬司・松浦啓一(編著)

書評としてきちんと本の価値を判定しなければ
ならないとしたら、
この本だけは、もう少しきちんと書いておかなければならない。

 前半は、根っころがってビール片手に読むか、
 授業の雑談に使うかしかできないところである。
 青木さんが、高桑氏と大野先生を巻き込んで
 雑学をかなりな勢いで「ぶちまけた」部分なのだ。
 
 # 好きな人は好きでしょう。

 後半、
> 7章 魚の困った名前−差別的和名をどうするか(佐藤陽一)
> 8章 標準和名の安定化に向けて(瀬能宏)

 については、きちんと、(ビールなんて飲んでないときに)
 読んでしかるべき部分であると思われる。
 題名通り、こういったことをないがしろにしていると、
 和名で泣くことになる。
  
 わたしのまわりではそろそろ少なくなってきたが
 コンクリートの上の赤いダニには、
 ある和名がついているが、それは、ある 
 和書に基づいてつけられている。
 しかし、学名が改変されているわけではない。
 つまり、海岸沿いにいるダニと同種とされていたが
 先頃ある和書によって別の和名がつけられたのだ。
 しかし、分類学上は海岸にいる種とコンクリートの上の
 赤いダニは同じ種になっているから(分類学的論文がでていないから)
 1種について和名だけがふたつあることになる。
 (衛生動物関係のMLには書けないのでここだけの話。)
 コンクリート沿いのダニを学名で同定すると、
 海岸沿いに棲んでいるダニになる。
 和名で同定すると、コンクリートの建物にいるダニになる。
 困ったことになっている。
(でもその和書には、別名として、学名と和名の関係を
 説明してあるので、実質的な混乱はそれほど起きないと
 期待しているのであるが......。)

 こんなこともふくめて、和名のきちんとした扱いを
 解説している非常にまじめな部分を含んでいる
 とても、良い解説のある 本であるとも思う。

 田中さんすみません便乗したようで。申し訳ありません。

 島野 智之     東北農業研究センター・福島
 

> 【書名】虫の名,貝の名,魚の名−和名にまつわる話題
> 【著者】青木淳一・奥谷喬司・松浦啓一(編著)
> 【刊行】2002年11月20日
> 【出版】東海大学出版会,東京
> 【頁数】242 pp.
> 【定価】2,800円(本体価格)
> 【ISBN】4-486-01592-4
> 【備考】
> ---
> 【目次】
> はじめに
> 虫の部
> 1章 虫の名談義(青木淳一・大野正男・高桑正敏)
> 貝の部
> 2章 にな,つぶ,ばい−貝の和名の語源を探る(奥谷喬司)
> 3章 図鑑ごとに違う貝の和名−統一が混乱を招いた(岡本正豊)
> 4章 カニの名の発想・エビの名の由来(武田正倫)
> 5章 イカの方言行脚−和名,地方名,市場名の混迷(奥谷喬司)
> 魚の部
> 6章 命に関わる魚の和名(松浦啓一)
> 7章 魚の困った名前−差別的和名をどうするか(佐藤陽一)
> 8章 標準和名の安定化に向けて(瀬能宏)
> 参考文献
> あとがき
> 虫・貝・魚にまつわる生物名索引
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 Satoshi Shimano,  Ph. D.
Department of Upland Farming
National Agricultural Research Center for Tohoku Region (NARCT)
Arai, Fukushima-shi, Fukushima 960-2156, Japan
satoshis@affrc.go.jp
Fax. +81-24-593-2155