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[IPM:1223] 書評:東海大出版「学術 論文のための著作権Q&A 」他2 点
IPMMLのみなさん,agroipmのみなさん,tisaのみなさん
羽曳野田中寛です。重複投稿,お許しください。
/書評第2弾は東海大学出版会の下記3点です。
「学術論文のための著作権Q&A」(・・・注.ネットの著作権も言及)
「虫の名,貝の名,魚の名−和名にまつわる話題」
「A Monograph of the Muscidae of Japan−日本のイエバエ科」
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【書名】学術論文のための著作権Q&A
【著者】宮田昇
【刊行】2003年02月20日
【出版】東海大学出版会,東京
【頁数】134 pp.
【定価】1,400円(本体価格)
【ISBN】4-486-01607-6
【備考】
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【目次】
まえがき
学術論文の著作権基礎知識
Q1出所明示の方法
孫引き引用の出所明示,海外著作物の引用と(c)
Q2適法引用
批判論文での引用,未発行著作物の引用,翻訳引用の場合
Q3「要約」使用・利用
引用の許される分量,絵画の引用,フェアユースと「引用」
Q4著作物と非著作物
図表の著作権,地図の著作権
Q5保護をしなくてよい著作物
死後公表の著作物,海外の政府刊行物
Q6美術と写真
寺社仏閣の建物,肖像権とはなにか,美術館は著作権者か
Q7写真の保護期間
戦前の報道写真,権利の存続の旧法時の写真,1956年以前の未公表の写真
Q8共同研究の著作物
死亡著作者の著作物の改訂,不合意の共同著作物,英訳での外国人協力の場合
Q9編集著作物とデータベース
監修者は編集著作者か,時系列的データ,「スイ・ジェリネスの権利」とは
Q10職務による著作物
在職中の研究にもとづく著作,外部執筆者の著作者人格権
Q11代作,下訳
下訳者の名前,翻訳権10年留保と翻訳者の権利
Q12改編,変形と著作者人格権
校正による改編,イラストの一部切除
Q13教育への利用
公開講座でのコピー,期末の試験問題,アメリカの教育利用
Q14海外の著作物の利用
加算しなければならない戦時期間,アメリカの著作物の保護期間
Q15インターネット使用
インターネットの著作物の国籍,LAN利用の著作権
Q16出版契約の要点
契約の解除はできるか,多くの著作者との契約,翻訳遅延による依頼の中止
Q17派生する副次権に備えて
出版社に委任した二次的権利,アメリカとの翻訳出版契約
保護期間の早見表
著作権を学ぶための参考図書
謝辞
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【感想】
実はこの本は(書評用にいただく前に)出版直後に買って,すぐに
読了した。とくにインターネット上の著作権について,天敵カルテの
関連で興味があったためである。Q&A形式でわかりやすく,
論文を書く人,ホームページを作成する人たちはぜひ一読すると
よいと思う。しかし,とくにネット上の著作権は今後もどんどん
変化することを留意しておくほうがよいだろう(天敵カルテが
Open source,Open data をポリシーとしているのは,ひとつには
この変化に振り回されないためでもある)。法律は(農薬取締法の
改正でも思うことだが)「最大多数の人が納得可能な(最善では
ないにしても次善の)常識の集成」だなあ,というのが実感である。
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【書名】虫の名,貝の名,魚の名−和名にまつわる話題
【著者】青木淳一・奥谷喬司・松浦啓一(編著)
【刊行】2002年11月20日
【出版】東海大学出版会,東京
【頁数】242 pp.
【定価】2,800円(本体価格)
【ISBN】4-486-01592-4
【備考】
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【目次】
はじめに
虫の部
1章 虫の名談義(青木淳一・大野正男・高桑正敏)
貝の部
2章 にな,つぶ,ばい−貝の和名の語源を探る(奥谷喬司)
3章 図鑑ごとに違う貝の和名−統一が混乱を招いた(岡本正豊)
4章 カニの名の発想・エビの名の由来(武田正倫)
5章 イカの方言行脚−和名,地方名,市場名の混迷(奥谷喬司)
魚の部
6章 命に関わる魚の和名(松浦啓一)
7章 魚の困った名前−差別的和名をどうするか(佐藤陽一)
8章 標準和名の安定化に向けて(瀬能宏)
参考文献
あとがき
虫・貝・魚にまつわる生物名索引
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【感想】
雑学の宝庫,というか入口にぴったりの本。「言語学や文化史の
専門家ではないが,和名を足がかりにしたひとつの文化論に
なったように思える」とのあとがきはうなづける。なお,標準和名は
学名と異なり,命名規約がないが,日本の生物学の「普及」に
果たした役割は学名以上であるに違いない。逆に,規約がないため,
標準和名の「安定性」に注意が払われる。「普及と安定性」を
キーワードとした系統分類研究者の悩みや苦心はもっと知られる
べきだろう。田中は実は一度だけであるが,和名の命名に
かかわったことがある。「セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ」
(田中・宗林1999昆虫と自然34(4)30-33)であるが,上記の
キーワードに自然と準じていたようである(ある意味,日本の
生物屋の文化に染まっていたわけだ)。ちなみに,青木さんが
昆虫の種でもっとも長いのは17文字の「フウトウカズラヤドリ
クダアザミウマ」だと書かれていて,「わっ,勝った(爆)」と
思ったのもつかのま,次のページをめくると「実は24文字の種が
ある」とあって,がっかり(長い和名は避けるべき,ということも
もちろん承知しているが,人情として(笑))。ついでに言うと,
英語で一番長い単語は「smiles」だそうな。最初と最後の文字の
間が1マイルもあるから・・・(本書には書かかれていない)。
途中からつい調子に乗って蛇足になったが,おあとがよろしいようで・・・。
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【書名】A monograph of the Muscidae of Japan (日本のイエバエ科)
【著者】篠永 哲
【刊行】2003年2月28日
【出版】東海大学出版会,東京
【頁数】347 pp.
【定価】12,000円(本体価格)
【ISBN】4-486-01603-3
【備考】
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【目次】
Author's preface
Plate 1-25
Diagnosis of Muscidae
Key to the Subfamilies
Bibliography
日本産イエバエ科ハエ類
Index (学名・和名索引)
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【感想】
この本は田中の手にあまるので,何人かの方に打診したが,
断られてしまったので,ここで併せて紹介する。田中の口癖は
「系統分類学が衰退すると,20年先30年先に一番困るのは
応用屋」である。このような系統分類学のモノグラフを出版される
出版社に対し,満腔の敬意と感謝を表したい(本をもらった
からではない)。日本語の検索表も付けられているが,
しいて言えば,(専門家以外は相手にしないという方針なら
かまわないが)種までは無理としても,せめて属までの
「絵解き検索」がほしかった。これがあれば,専門家以外でも
めげずに挑戦する人が増え,読者も何割かは増え,イエバエの
ファンを増やすことにもつながると思われる。そこが少し残念。
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田中 寛 (たなか ひろし)
大阪府立食とみどりの総合技術センター(2002年4月1日改称)
都市農業部総合防除グループ
〒583-0862 羽曳野市尺度442
Phone: 0729-58-6551(内249)
Fax: 0729-56-9691
E-mail: hiroshi-habikino.tanaka@nifty.ne.jp
田中寛Business page: http://homepage2.nifty.com/hiroshi-habikino/
Web版大阪府園芸植物病害虫図鑑: http://www.afr.pref.osaka.jp/zukan/
天敵カルテ: http://www.tenteki.org/
KTSOS害虫文献データベース: http://riss.narc.affrc.go.jp/ktsos/
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