[Date Prev][Date Next][Thread Prev][Thread Next][Date Index][Thread Index]

[IPM:1425] Re: ハサミムシによる加害



木村様、皆様、河野@野菜茶業研です。

At 09:39 2004.7.29 +0900, kimura wrote:
>確かに先日の長野県南佐久郡北相木村のハサミムシを採種した畑は、谷間にある
>日当たりの悪い畑で、この畑の上にある台地の畑からは見つけることが出来ませ
>んでした。ここ一箇所の畑の縁の数列に多かったです。

想像したとおりで、ホッとしました。

>先週巡回に行ったときは、山梨の清里、長野県菅平の畑でも多く見られました。
>菅平では成虫もかなり採取できたので、筑波大の実験センターで昆虫学を専攻さ
>れている学生さんに見てもらったのですが、これは、キバネハサミムシというこ
>とでした。

キバネハサミムシもコブハサミムシと同じような場所で見つかることが多いです
が、コブハサミムシは四国、九州を含む西日本にも分布しているのに対して、キ
バネハサミムシは中部地方以北に分布が限られています。また、密度は低いもの
の、キバネハサミムシは東北地方あたりでは平坦地でも見つかる場合もあります。
聞いた話では、北海道まで行けば、コブハサミムシもかなり平坦な場所で見られ
ることもあるようです。食性は、キバネハサミムシとコブハサミムシは似ている
と思われます。
キバネハサミムシの幼虫はコブハサミムシの幼虫に大きさ等が似ていますが、4
齢(終齢)幼虫では、キバネハサミムシの翅芽の周辺部が淡色になっている(コ
ブハサミムシの場合は全体が黒い)ので識別できます。

>添付した画像「nagano」のハサミムシは、すでに死んでいた個体ですが、これで
>もハクサイ一株にいたものの半数程度で、食害痕、糞等で、出荷はできない状態
>でした。
>そこも林に近い畑の縁で多かったです。

写真が小さいのでわかりにくいですが、写真に写っているのは死体では無く、4
齢幼虫が成虫になるときの脱皮殻のように思われます。コブハサミムシの脱皮殻
は色が黒く、脱皮したあと脱皮殻を食う習性が無いか希薄であるため、脱皮殻が
そのまま残ることが多いです。

>特にハサミムシを対象に防除する必要も現状ないとは思いますが、会社の人間と
>いう立場でなければ、こう集団でハクサイ内部で棲息している生態は面白いと思
>います。ファミリーなのでしょうか。

ハサミムシ類は卵塊で産卵するため、幼虫が群生する場合がありますが、コブハ
サミムシの場合は、産卵場所が集中することが多いので、同じ場所に集合してい
たからと言っても、兄弟姉妹どうしかどうかはわからないと思います。
また、ひょっとしたら、ハクサイは羽化場所として利用されているだけかも知れ
ません。

>今見ている野菜はほとんどハクサイなので、異なる産地でも同じ昆虫に遭遇する
>ことも多く、ただのムシ以上−害虫未満の昆虫もいるようです。

同じような状況に出会うことが多いとすれば、何か特別な関係があるかも知れま
せんね。私も興味ひかれます。

--
from  河野 勝行 (KOHNO, Katsuyuki)
      野菜茶業研究所・葉根菜研究部・虫害研究室
      〒514-2392 三重県安芸郡安濃町大字草生360
      Phone: 059-268-4643   Fax: 059-268-1339
      e-mail: kohno@affrc.go.jp