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[IPM:519] Re: バータレックについて
高松 様
宮崎県総合農業試験場の黒木修一といいます。
バータレックの材料となっている昆虫寄生菌ですが,基本的には飽和に近い湿度を12
時間程度継続させることが必要とされています。日本には植物病害も数多くあり,多くの
病害は高湿度を好むので,人為的にそのような高湿度を保つことは病害の発生を助長する
ことになるので実際には無理ではないかと思われます。
しかし,やむを得ずそのような環境が生じてしまうことは良くあることで,そのため殺
菌剤の散布は欠くことのできない作業となっています。つまり,高湿度で病害の発生しや
すい時期こそ,このような昆虫寄生菌製剤を利用できる時期であるといえます。(例えば
ピーマンでは斑点病が出る時期はこの製剤の使用適期です)
湿度は春から秋にかけて露地栽培または雨よけでは夜間の湿度はほぼ飽和しますし,施
設なら保温のために夜間施設を閉めるけれども加温機が作動しない時期は最適環境となり
ます。さらに,ナス科などでは樹が茂ってくるので,加温機が作動するようになっても意
外と保湿されます。いろいろな時期に使ってみると意外と使える剤です。ただし,他の天
敵類と同じように誰が何時使っても効果がある剤とはいえません。やはり条件がいろいろ
あります。例えば,温湯暖房機や暖房機本体付近では放射熱により葉が加温されるので,
温風暖房よりも効果が劣るといったコツみたいなものもあります。
これは賛否両論あると思いますが,昆虫寄生菌製剤は散布液が虫に必ず接触する必要は
ありません。胞子は葉上で発芽して葉上は菌糸が縦横に走ります。この菌糸は胞子を形成
するので害虫が動くことでその胞子が感染します。不思議なことに葉上の菌糸は虫を目指
して伸展するような事例も観察されています。最初にバータレックの菌を研究した研究者
は予防的に散布することも可能であると論文中で指摘しています。一度発病した害虫は昆
虫病原菌の培地となりますから,一旦昆虫病原菌がほ場内に蔓延すると他の天敵には見ら
れないほど長く高い防除効果が得られます。
農業および園芸の新年号に似たようなことを書きましたので参考にしてください。
答えになってないと思いますが,自分の作物と作型を見て使えそうなら使ってみてくださ
い。
rose wrote:
> 和田さん、鷲坂さん、みなさん
>
> いろいろご指摘ありがとうございます。バータレックについて、カタカナ名が頭に
> はいっていなくて、気がつきませんでしたが、微生物由来の新しい農薬ということ
> で、話を聞いたことがありました。(すみません)
>
> 確か、温度18〜28℃、湿度80パーセント以上を、半日〜3日間維持すると注意書き
> があり、こりゃ無理だと意識の外においていました。ただ、チェスだけの連用に心配
> になってきていますので、背に腹は代えられないという気持ちでもあります。それ
> で、もうすこしバータレックについて質問があるのですが。
>
> (1)私のところは、温風暖房なので、冬場夜間の湿度は(正確に測ったわけではあり
> ませんが)かなり低いと思います。というのは、寒い日に午後消毒して、翌朝には
> 葉っぱが乾いているのですから。仮に散布するとすれば、天気のいい日に採花後、朝
> 8時過ぎに朝一番で散布し、天窓は設定温度をあげて簡単に開かなくして湿度を保
> ち、午後の採花は特別に休み(葉っぱが薬でびちゃびちゃだといけないので)、と
> いった段取りで、なんとか12時間所定の条件を維持するというものですが、それでも
> 3〜4時ごろには日照も弱くなり暖房機がかかる可能性はあり、かかれば湿度の維持
> はどうかなというかんじですし夜8〜9時までとなると....。
> ということで、仮に12時間後に湿度が急激に下がっても菌の発育は見込めるので
> しょうか。
>
> (2)散布菌のアブラムシへの感染は、直接かかれば当然として、薬剤のかかった葉に
> 摂食、ないし、吸汁した場合も感染するのでしょうか(要は、散布に際して、液が直
> 接かからない虫にもこうかはあるのかどうか)
>
> お願いします
>
> 高松茂樹
> rose@he.mirai.ne.jp