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[IPM:597] IPM のコンセプトの整理



 先日、普及員の人から質問されて、IPMのコンセプトをまとめた資料を作りまし
た。ちょっと行き詰まったので、お知恵をお借りしたいと思います。

 IPMは、昔言われていた総合防除とは違うわけですよね。

 防除のコンセプトを段階的に考えてみると。

(1)防除歴に従った暦防除
 過去の経験や試験成績をもとに、時期別あるいは生育段階別に防除薬剤を決め
ておいて、それに従って防除する。

(2)総合防除
○単に薬剤防除とか耕種的な防除方法を組み合わせて防除する。
○病害虫発生程度の確認は必須でない。(歴防除もあり)

(3)IPM
○様々な防除方法を用意し、病害虫の発生程度に応じて合理的に防除を行う。
 (原則として歴防除の否定)
○天敵等の使用義務はないが、主要な防除手段と位置づけ、補足的に耕種的防除
 や薬剤防除を用いるのが主流となっている。
○農家のメリットは散布作業の軽減。
○農家のデメリットは病害虫リスクの拡大、情報体制整備、診断技術力向上など。

(4)持続農業法に基づく認定農業者
○施肥、病害虫防除において、化学合成物質の投入を軽減する技術の導入義務が
 生じる。
○化学合成農薬の量的な削減義務はない。
○農家のメリットは認定農業者の肩書きによる有利販売。
○農家のデメリットは技術導入義務。

(5)改正JAS法に基づく減農薬栽培(特別栽培米等)
○既存の農薬使用回数(成分数×処理回数)を半減する。
○農家のメリットはJASに基づく有利販売。
○農家のデメリットは農薬削減による病害虫リスク拡大。
○使用回数が超えた場合は、通常の作物として出荷可能。

(6)無農薬栽培、有機栽培等
○技術的に確立されていない。
○現在のところ、契約栽培など特殊需要に限られている。
○行政の対応は将来の課題。



 で、何が言いたいかというと、IPMを謳う場合、防除には必ず根拠が必要になる
のではないかということです。現在の幼虫密度がこれくらいだからとか、去年の
発生量がこれくらいだったからとか、いう根拠です。

 それがきちんと整理されていなければ、いままでの総合防除と変わらないこと
になるのではないかなあと思うのです。

 逆に、根拠がきれいに整理できたら今までどおりの防除でもIPMなのか?

 謎は深まります。

 暦ではなく、メニューによる防除体系の確立ということでしょうか。

 たとえば、比較的病害虫の少ないさといもの場合、ハダニは1葉あたり何千頭
いても実害なしとか、ハスモンヨトウなら1葉5頭で要防除とか防除のメニュー
を整備します。そして、もしその水準を超えなければ無農薬栽培でも目標収量を
確保できるとします。そうなれば、天敵もフェロモンディスペンサーも使わない
としても、さといもの IPMは完成したといっていいのでしょうか。

 現場では、IPMと他の課題(上の表など)が錯綜していて、植防担当者ですら混
乱しています。

 ご意見なり、考え方を教えていただければと思います。


  _/_/_/  小林彰一 [ http://www.asahi-net.or.jp/~na9s-kbys ]  _/_/_/