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[IPM:1355] 書評「休眠の昆虫学」



IPMMLのみなさん,agroipmのみなさん,tisaのみなさん
Cc田中誠二さん,稲さん

羽曳野田中寛です。重複投稿,お許しください。

/田中誠二さんと東海大出版の稲さんから依頼のあった
書評を書きました。

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【書名】休眠の昆虫学−季節適応の謎−
【著者】田中誠二・檜垣守男・小滝豊美(編著)
【刊行】2004年03月05日
【出版】東海大学出版会,東京
【頁数】329 pp.
【定価】3,200円(消費税別途)
【ISBN】4-486-01642-4
【備考】
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【目次】
まえがき
序章 休眠研究に魅せられて(安藤喜一)
第I部 季節と休眠 
第1章 イナゴ類の卵休眠と季節適応(安藤喜一)
第2章 休眠期の前でも越冬するコバネササキリの卵(石栗陽一)
第3章 イブキヒメギスの卵休眠と多年性生活史(檜垣守男)
第4章 三度休眠する亜熱帯ゴキブリ(田中誠二・朱 道弘)
第5章 カメムシ類の成虫休眠と餌植物の季節性(中村圭司)
第6章 ヤナギルリハムシの成虫休眠−集団内変異の大きさとその意義(石原道博)
第II部 気候と休眠
第7章 コオロギ類の分布拡大と適応—熱帯から亜熱帯そして温帯へ(正木進三)
第8章 コオロギ類の幼虫休眠と地理的変異(新井哲夫)
第9章 侵入昆虫アメリカシロヒトリの適応と分布拡大(五味正志)
第10章 キボシカミキリの西日本型と東日本型(新谷喜紀)
第11章 タイリクヒメハナカメムシの分布と都市の温暖化(清水 徹)
第12章 ナガサキアゲハの分布拡大と蛹休眠の性質(石井 実・吉尾政信)
第III部 厳しい季節を生き抜く仕組み
第13章 休眠と耐寒性の関係(後藤三千代)
第14章 昆虫の凍結温度を決める要因(田中一裕)
第15章 遺伝子からみた耐寒性(後藤慎介)
第16章 究極の乾燥耐性−ネムリユスリカのクリプトビオシス(渡辺匡彦)     
               
第IV部 季節を読み取る仕組み
第17章 光周反応とは(沼田英治)
第18章 光周測時機構−ヨトウガを例に(木村勇司)
第19章 概日時計−昆虫たちの昼と夜(渡 康彦)
第20章 光周性と概日時計の分子的なメカニズム(竹田真木生)
第V部 休眠のホルモン制御と人工覚醒
第21章 休眠とホルモン(小滝豊美)
第22章 休眠と脳(志賀向子)
第23章 ストレスと休眠覚醒(城所久良子)
第24章 培養系からみた昆虫の卵休眠(岩田健一)
第25章 休眠の人工覚醒法と休眠制御物質(鈴木幸一)
あとがき
専門用語
学名索引
和名索引
事項索引
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【感想】
序章の安藤さんの「本書は昆虫の休眠現象に魂を注いだ人々の
研究成果のエキスを記録したものである」と,まえがきの編者の
「休眠の多様性と神秘的なメカニズムについて,そして何より
昆虫のおもしろさと奥深さを知っていただきたい」「現象の解明に
たどり着くまでの研究者の苦悩と試行錯誤なども疑似体験して
いただきたい」が全てと言ってもよいであろう。書評者も
学生時代に休眠現象(トノサマバッタ)を扱っていて,
やればやるほど新しいことが見つかって面白いけれども謎も深まる,
というドキドキ体験をしているが,たぶんこれは中毒症状で,
この中毒の程度のひどい人たちがこの本を書いたわけだ。
どんな分野でも同じことはもちろん言えるが,「謎解き」中毒者が
多発するという意味で,この分野はとくに麻薬度がきついと思われる。

1993年に出版された「昆虫の季節適応と休眠(竹田真木生・
田中誠二編),文一総合出版」に比べて測時機構やホルモン制御,
そしてそれらの分子的メカニズムにより大きくページが割かれて
いることも目立つ。謎解きは必然的にこの方面にも向かわざるをえない。
一方,亜熱帯・熱帯の休眠への興味もますますつのっている。
正木さんの第7章の中の「6.休眠および光周性起源の仮説」は
「もうこれ以上の材料をかき集める条件と時間がない」という
コメントのついた,未発表データを使った覚書である。
多数の著者による著書は,実は想像以上のエネルギーを要する。
本書は安藤さんの退官を契機として(エネルギー源として)
企画されたものである。

ps.田中誠二さんの名前を出せば,著者割で買えます。

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田中 寛 (たなか ひろし)
大阪府立食とみどりの総合技術センター都市農業部総合防除グループ
〒583-0862 羽曳野市尺度442
Phone: 0729-58-6551(内249)  Fax: 0729-56-9691
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Web版大阪府園芸植物病害虫図鑑: http://www.afr.pref.osaka.jp/zukan/
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