[IPM:1356] 書評「ただの虫を無視し ない農業−生物多様性管理」

[h.tanaka@xxxxxxxxxxxxxxxxx]

IPMMLのみなさん，agroipmのみなさん，tisaのみなさん
Cc桐谷さん，橋本さん

羽曳野田中寛です。重複投稿，お許しください。

／桐谷圭治さんと築地書館の橋本さんから依頼のあった
書評を書きました。

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【書名】「ただの虫」を無視しない農業−生物多様性管理
【著者】桐谷圭治
【刊行】2004年03月31日
【出版】築地書館，東京
【頁数】192 pp.
【定価】2,400円（消費税別途）
【ISBN】4-8067-1283-3
【備考】
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【目次】
まえがき
第I章．農業の将来
世界の人口，農業，環境
アジアの農業環境と稲作
アジアにおける稲の病害虫防除
アジアにおける農薬汚染
一石三鳥の要防除密度
緑の革命−稲の新品種
総合的有害生物管理（Integrated Pest Management: IPM）
日本農業への期待−水田の多面的機能
総合的生物多様性管理（Integrated Biodiversity Management: IBM）
第II章．化学的防除の功罪
化学農薬依存への反省
BHCの環境汚染
BHCの使用禁止−IPMへの第一歩
農薬の負の遺産（1）
農薬の負の遺産（2）
農薬の選択的毒性
もし農薬がなかったら
減農薬の試み
減農薬の理論
減農薬の実践
ニカメイガの減少−無意識のIPM
第III章．有機農業の明暗
自然の加害者から保全者へ
有機農業とは
有機農業への期待−日本
有機農業の隘路
有機農業の未来
第IV章．施設栽培の生態学
農業生態系と害虫相
世界3位の施設園芸国
施設の害虫相
施設の害虫管理
生物的防除を基幹にしたIPMへの移行
IPMの決算
地球温暖化を先取りする施設栽培
第V章．総合的生物多様性管理（IBM）
生き物を育てる機能
IBMの理論
水田のIBM
IBMを実行するための基本的考え
あとがき
参考文献
害虫防除の年譜
節足動物，センチュウの和名と学名の一覧
索引
コラム（別途21件）
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【感想】
まえがき（あとがき）：難しそうに書評を書いてしまったことを
反省しているが，内容は事例も非常に多く，農家や市民，
行政担当者にわかりやすく読んでもらえるものである。最後の
「まとめ−肩の力を抜いて（IBMを実行するための基本的考え）」
から読んでもらうほうがいいと思う。

IBM（総合的生物多様性管理）はIPM（総合的有害生物管理）と
保全生態学（自然環境の再生・保全）の共存，統合を意図した
概念である。桐谷さんの持論は「基礎的なことがもっとも応用的」
である。たぶん，これと同列にあるのだろうが，「全てのことを
−とくに現在世の中一般に信じられていることを−自分自身の
ことも含めて−疑って検証し，伝える」という姿勢も一貫している。
ある意味でのアナーキーである。しかし，この姿勢がなければ，
IPMと保全生態学の統合，そして，社会における実現は不可能だ。
外来種のマルハナバチや天敵の導入にあたって生じた問題は
まだわかりやすいと言ってもよい。氾濫する複雑で，解決が容易でない
問題に対して，上記の持論と姿勢が「基礎」にならざるをえない。
複雑なテーマに正面きって挑戦したため，不消化なところもあるが，
この本のような「たたき台」があってはじめて，ものも考えられるし，
議論もできる。

http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN4-8067-1283-3.html

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田中 寛　（たなか　ひろし）
大阪府立食とみどりの総合技術センター都市農業部総合防除グループ
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KTSOS害虫文献データベース: http://riss.narc.affrc.go.jp/ktsos/
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