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[IPM:1363] マイナー作物セミナー 私的リポート
IPMMLの皆様
ライターの松永です。先月始め、マイナー作物に関するセミナーの告知を、セミナー
主催者に依頼されて致しました。フードサイエンスというサイトでリポートを書く予
定にしていたのですが、掲載を少し先延ばしすることにしましたので、先にこちらで、
私が興味深かった点を中心に、内容報告をします。
大変遅くなりましたうえごく簡単で、すみません。
関連記事が農業協同組合新聞で読めます
http://www.jacom.or.jp/news04/nous101n04032905.html
「安全で多彩な食生活を目指して〜マイナー作物の農薬登録問題を考える」
3月18日 JAビル
主催:千葉大園芸学部
(1)アメリカにおけるマイナー作物問題の取り組みについて、「Interregional
Research Project No.4」(IR-4)=マイナー作物の農薬登録促進支援の国家事業=
のExecutive Director とAssociate Director が講演
・IR-4が対象としている特定作物は、アメリカで栽培面積が12万ヘクタールに満た
ないもので、野菜や果物から庭木、芝まで幅広い。全米の農業生産の約40%を占めて
いる。
・日本と同様に、栽培面積が少ない作物については農薬企業が適用申請を行わない。
そこで、IR-4が効力や残留に関する試験を行い、EPA(米環境庁)に適用拡大申請を
行う役割を担う。運営資金は、米農務省や州立農業試験場、農薬メーカーなどが出し
ている。(2003年は、運営資金の87%を農務省が拠出)
・戦略は、新技術の追跡/低リスク農薬開発に努力/メーカーとの協力/作物グルー
プごとに残留基準設定が行えるように、グループの代表作物をとりあげるーーの4本
柱
・IPMに使える農薬は、優先的に検討課題にしている
・このプログラムで誰が恩恵を受けるのか、といえば、生産者であり食品加工業者で
あり消費者である、という位置づけ
・本部はニュージャージー州にあるラトガース大に置かれている。全米に圃場試験セ
ンターや分析機関を持っている。
・実績は、2003年が食用作物だけで793件。
・どの作物、農薬の課題を優先して研究するかについては、生産者や生産者団体、連
邦や州の研究者の意見を聞く。
・EPAと強固なパートナーシップがある。
IR-4
http://ir4.rutgers.edu/
(2)パネルディスカッション「我が国におけるマイナー作物問題の実態、期待、解
決への展望」
・農家やJA、行政、生協などの関係者をまんべんなく集め、それぞれが報告
・農水省農薬対策室長も発言。「経過措置により、各都道府県で財政措置がとられて
いる。日本でも、税金が既に一部投入されているのです。米国と同じ仕組みは、日本
ではとれない」
感想
・マイナー作物への農薬登録は、その作物を食べる消費者のためである、という視点
は、非常に新鮮でした
・米国では、マイナー作物といっても日本から見れば栽培面積は大変広く、恩恵を受
ける消費者もまた多い。日本では、消費者の農薬への反感が大変強いこともあります
し、日本で同じように公的資金に基づく機関を作り運営するのはなかなか難しいだろ
う、と思わざるを得ません。
・生産者やメーカー、行政当局などと密接に連絡をとりながら事業を進めていること
が強調されました。米国ではそもそも、メーカーが新しい薬剤を開発する時にはかな
り早めに国の機関に行き、詳しく相談に乗ってもらいながら研究開発を進めるそうで
すね。無駄な試験をする必要がないし、その過程でのやり取りも記録になるので登録
申請時の「無駄な」手続きがかなり減る、とメーカーの方から聞いたことがあります。
IR-4も、そのようなシステムを前提とした協力関係でしょうか? 日本だと「メーカー
と行政が癒着」などと問題視されそうです。
・農水省農薬対策室長の話は細かな説明に留まり、「経過措置後にどうするのか」を
うかがえるような話がない。べつに、今詳しい話をしてほしいわけじゃない。でも
「農水省の姿勢」がさっぱり見えてこないのは残念。
・パネルディスカッションでは、生産者が「使える農薬がないために、どれほど苦労
しているか」をさんざん説明。ディスカッション後の会場質問で、反農薬グループの
方が「議論は、農薬の登録拡大が前提になっている。どうやって農薬を使わないで栽
培できるか、考えていただきたい」と発言。これに対して、生産者が「努力だけでは
どうしようもない」と反論。こういう不毛のやりとりこそ、一般消費者に見て、何か
を感じてもらいたいものですが、残念ながら会場は、農薬企業や行政関係者ばかりで
した。
松永 和紀(まつながわき)
waki@bc.iij4u.or.jp
日経BP社のサイト「フードサイエンス」で先週から、コラム「松永和紀のアグリ話」
を連載しています。週1回書いていきます。1回目は、ケルセンです。お暇な折にお
読みください。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fs/top.jsp