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[IPM:2053] RE藤澤IPM:2049発病限界点ほか



藤澤さん

田中寛@大阪環農水総研です。

> 逆説的に、これから栽培する作物を、昨年全滅した圃場が近くにあったので、
> その圃場とか隣接する圃場の作物を全滅させようと試みると、これも簡単では
> ないというような事ってありませんか?

おっしゃるとおりです。
害虫の各種試験研究を行う際,
低密度では良好なデータが得られにくいため,
わざわざ接種・放飼などにより多発させることがあります。
たとえば,ミナミキイロアザミウマやハモグリバエ類を多発させるために
ピレスロイドを散布するとかね(笑)。
それでもなかなか思うように多発してくれません。

実験的に青枯病を多発させようとするとなかなかうまくいきません。
うちの試験場にはそのためのコンクリート枠圃場があるくらいです。
また,私は大阪府の特産マイナー作物の葉ごぼうのセンチュウの試験をするのに
おととし去年と2年連続で失敗しました。
今年はやっとキクで多発した圃場を見つけて,そこで試験をさせてもらい,
良好なデータが得られました。
・・・低密度での試験は環境にともなう『ふれ』が大きいため,
繰り返し試験をたくさん行う必要があるのです。

逆説的に,実験的に多発させようとして失敗した場合,
その原因を探ると防除のヒントが得られることもあります。
・・・藤澤さんの末尾の質問に対する回答にもなっていますが。

> 試験管で増殖した菌の散布は無しとして、翌年までの作物残渣だけで作物全滅を
> 必ず起こせるものでしょうか?

相当高度なテクニックを使っても,まず無理でしょう(笑)。

> 小さな声になるのですが、病気を増やす方法を農家は教え込まれている?
> そんな風に思ったりします。)

そうでしょうね。

> 作物を全滅させるテクニックを知る事と、発病限界点を知り事で、
> 病気をコントロールする方法がある?
> なんとなくあるのでは? そんな風に思うのです。

そのとおりです。
ただ,生物をコントロールするのは無生物をコントロールするのと異なり,
食物,天敵,環境が複雑にからみあっているので,
なかなか思うようにはならない,というのが実際です。
天敵利用がそこそこ軌道に乗ってくるまでに膨大な試行錯誤がありました。
今なお試行錯誤が続いていると言ってよいでしょう。
でなければ,このIPMMLや天敵カルテや天敵Wikiは不要でしょう(笑)。