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[IPM:602] Re: トマトサビダニ



田中さん,IPMMLのみなさん

 私は三重県にある農水省野菜・茶業試験場の河合です。一昨年の11月からバング
ラディッシュから来ているハック氏とともにトマトサビダニの仕事をしています。
 昨年は以下の仕事をしました。田中さんと同様な成績概要書からのコピーです。

2.試験方法
 1)小型ガラス室(各10㎡)2棟を用い、5月27日にトマト‘ハウス桃太郎’を40株
づつ定植した。5月30日に一方のガラス室の全株にサビダニを(平均で株当たり130
頭、内、成虫が108頭、若虫が22頭)接種し、他のガラス室を対照区とした。
 2)接種から原則として7日間隔で、全株について草丈、葉数を数え、5株につい
て寄生成虫数を数えた。
 3)葉内及び小葉内のサビダニの分布様式を調べ、サンプリング法を検討した。

3.成果の概要
 1)接種6週間後までサビダニは指数的に増加し、株当たり187,286頭(1,822倍)に
達した。その後、寄生に伴う株の劣化により個体数は増加しなかった。また、一部の
株では捕食性ダニの発生により、個体数は急激に減少した。なお、この捕食性ダニは
松山東雲短大の芝博士によりコハリダニ科のHomeopronematus anconai (Baker)と同
定された。
  2)寄生株では接種1週間後から草丈、葉数が無接種区に比べ有意に小さくなり、
その差は徐々に大きくなった。また、接種株では接種部位でサビダニが急速に増殖
し、葉は褐変、枯死し、サビダニは徐々に上位の葉へ移動した。このため、寄生株で
は健全葉数は極めて少なくなり、サビダニの寄生の多い部位は徐々に上部へ移った。
3)葉内ではサビダニは約半数が葉柄に寄生し、小葉間では葉柄に近い小葉の密度が
高かった。小葉内でも葉柄に近い部分の密度が高かった。これらから、株全体の密度
を推定するためのサンプリング法を決定した。

 6週間で1800倍に増え、下の方から急速に葉が枯れあがって行きました。6週間後
まではコハリダニは確認できなかったのですが、7週間後にはコハリダニのいた株の
密度はいなかった株の1/19、8週間後には1/61に減少しており、明らかにコ
ハリダニの密度を押さえていました。しかし、この試験ではコハリダニの発生が遅
く、コハリダニのいた株でも枯れあがっていましたが、もっと早くから発生していれ
ば、実用的な防除ができたかも知れません。

> (5)コハリダニ(天敵):コハリダニはサビダニより移動分散が速く,
> ケルセン散布後1〜2週間で侵入してくる。コハリダニのおかげで,
> スポット散布後に再多発しない場合も多かった。コハリダニは
> 田中IPM280で同定者紹介をお願いしたところ,Acari(ダニML)から
> 回答があり,松山東雲短大の芝実教授に同定していただいた。
> コツメナシコハリダニ属の一種で,芝教授に謝意を表する。
> 千葉大天野さん,野菜試河合さんの(トマトサビダニの天敵の)
> コハリダニも同種のようなので,天野さん,河合さん,コメントを
> いただけると幸いです。このコハリダニが実用化できると
> いいのですが・・・。

 私のところで発生したコハリダニも同じ種類です。なお、現在、当研究室でトマト
サビダニを餌に飼育中です。今後、防除効果を試験していく予定です。


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 野菜茶試 虫害研
  河合 章   tpest@nivot.affrc.go.jp
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