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[IPM:999] Re: 環境へのリスク
松永様、IPM-MLの皆様
九大・生防研の高木です。
> 天敵のベネフィットとして必ず「化学農薬を使わずにすむ」ということが第一に挙
>げられます。つまり、化学農薬のリスクと天敵のベネフィットは裏表の関係なのです。
> ここで、私は「あれっ?」と思うのです。それって、化学農薬のリスクが存在しな
>い限り、天敵農薬の存在意義はないってこと?
農業をやる以上、病害虫防除は必要です。いろんな病害虫防除法がありますが、その
すべてにベネフィットとリスクがあります。総てについて、できるだけベネフィット
とリスクを明らかし、それをディスクローズすべきでしょう。でもどこまで研究すれ
ば十分なのか、お金も時間もかかるし・・・。しかも、病害虫はまってくれません。
> でも、天敵農薬に化学農薬以上のリスクがあったら?(この場合のリスクは、収
>うんぬんとかできた品物の価格とかコスト増というようなことだけではなく、やはり
>生態系攪乱が重要ですね)
農業、特に稲作農業は、それ自体が最大の生態系撹乱だと思いますが・・・。
> この説明、理解しやすいです。高木さん、ありがとうございます。
> でも、これもやっぱり、あれっ? となる。
ぼくは大学の農学部で教員をしてますので、その立場で発言しています。松永さんが
ぼくの発言に「あれっ?」てなられるのは予測できます。「あれっ?」てなられた
ら、具体的に出していただければ、出来る範囲でお答えします。
> 私は遺伝子組み換えも取材しています。私には、遺伝子組み換えと天敵の論議がだ
>ぶって見えます。
化学農薬も天敵農薬も遺伝子組み換え作物も総てベネフィットとリスクがあります。
害虫防除に関しては、今アメリカで使われているBT植物はものすごい技術で、第2次
世界大戦後、有機化学農薬が発明されて、害虫防除技術が飛躍的に進歩してたのに匹
敵するものだと、ぼくは個人的に思ってます。リスクも大きいかも知れませんが・・
・。化学農薬のリスクが大きいからといて、化学農薬の使用をやめるのでなく、その
リスクをいかに減らしていくのかが重要だと思います。
> 私は、遺伝子組み換えの取材の折、生態学者から「組み換え種と野生近縁種の交雑
>の可能性はほとんどないから、組み換え種の遺伝子拡散が起こらない、という考え方っ
>は極めて危険だ。確率ゼロでなければ、自然はどんなことだって起こりうる。そのこ
>とは、この地球の歴史と今ある生物が証明している」と、さんざん聞かされました。
> これをきっかけに、移入種の問題に関心を持ち続けています。
近縁の野生種が近くにある場合は、遺伝子組み替え作物の栽培は控えるような配慮が
必要です。それは、考慮されていると思います。また、総ての科学技術で、リスクが
0というものはないと思います。
> だから、しつこくしつこく、問いかけるのです。天敵農薬のベネフィットは何です
>か。リスクはなんですか。定性的な話でなく、データを教えてください。どの学術誌
>のどのページにありますか? その学術誌のIFは? と。
色々ありますが、今手元にあるのでは、独立行政法人農業技術研究所で平成13年12月
12日に行われたシンポジウム記録「導入昆虫の生態系への影響とその評価法」という
のがあります。
また、生物的防除のリスクに関して詳しく知りたければ、以下の書籍があります。
Biological Control: Measures of Success. G. Gurr and S. Wratten eds. (2000)
Kluwer Academic Publication.
Evaluating Indirect Ecological Effects of Biological Control. E. Wajnberg,
J.K. Scott and P.C. Quimby eds. (2001) CABI Publishing.
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812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1
九州大学大学院農学研究院生物的防除学講座
高木 正見
Masami Takagi
TEL 092-642-3035 FAX 092-642-3040
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