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[IPM:1111] Re: 中国天敵利用通信 16



大野・高木様、ほか皆様
ただの虫の英語訳には私も随分悩みました。そもそも「ただの虫」という発想は関西
の言葉にあるような気がします。関西の人間にはそれほど特別な言葉ではないので
す。私がこの言葉を使ったのは、1973年インセクタリュウム(10巻、218頁)の巻頭言
「人と害虫の共存」で「害虫も少なくなれば、天敵保護のための益虫になります。要
するに、害虫をただの昆虫にすること、これが・・・共存の唯一の道ではないでしょ
うか」というのが印刷物としてのはじめての登場です。
その英訳ですが、「害虫管理とは害虫をただの虫にすること」という立場では、密度
が高いうちは害虫で、低くなるともはや害虫ではないという流れでは"minor
""non-target"とも考えられます。密度を考えない概念で、害虫、益虫、ただの虫と
いうカテゴリーでは、ただの虫は"neutral insect"となるように思います。私は
Kiritani, K.(2000) "Integrated biodiversity management in paddy fields:
shift of paradigm from IPM toward IBM" Integrated Pest Management Reviews
5:175-183,(Kluwer Academic Pub.). ではただの虫をneutral insect
とし、サンカメイガなどの害虫から絶滅危惧種になったもの、すなわち密度が入って
きた時はminor insect として扱いました。ユスリカなどは個体数が多くてもneutral
insect かつ
minor insect, 源治ボタルは数は少ないが、矢張りminor,neutral , サンカメイガは
害虫の希少種でminorというニュウアンスで使いました。「ただの虫」も学術的に扱
う場合は面倒な所があります。
いい知恵があればと思います。







桐谷圭治
413-0231 静岡県伊東市富戸1020-292
ロワジール伊豆高原3番舘503号
Tel/Fax 0557-51-7885
kiritani@abeam.ocn.ne.jp



> こんにちは。宮大農学部
> 大野です。
>
> 高木さま
>  
>  いつも紹介ありがとうございます。Neutral Insectsはただの虫に相当するとい
うことで結構だ
> と思います。無理に日本語に訳すなら、「ただの虫」が一番語感としては良いので
すね。あえて
> Neutralを訳すなら中性よりも中立ということかもしれません。この意味で、大野
はindifferent
> insectsという語をあてたこともあります。
>
>  ご参考まで
>
>
> >中国生物防治Vol 18(4)が届きました。
> >
> >1.コナガ寄生蜂Diadegma semiclausumの選好性に及ぼす寄主植物の影響
> >李 欣、等 浙江大学応用昆虫研究所
> >白菜とキャベツにコナガを接種し、寄生蜂に選択させたところ白菜のコナガに対
する
> >寄生率が有意に高かった。また香気による選好実験では機械的な傷からの香気に
比べ
> >コナガによる食害が有意に選好性が高かった。植物だけの選好性には差がなかっ
た。
> > 実験はすべてY型ガラス管装置を用いた。
> >
> > 2.水田における中性昆虫(Neutral insects)の多様性とその生態的意義の分析
> >? 雨芳 等 湘潭師範学院生命科学系
> > 広東省の1000mmの調査圃場で9カ所(各区20株)から吸引捕虫機によって水田
の
> >すべての昆虫を捕らえ、中性昆虫、捕食性昆虫、寄生性天敵、害虫の4つのカテ
ゴ
> >リーに分け継続的なモニタリングを行った。  中性昆虫は種類数では初期には全
虫数
> >の16.98%、後期には6.82% 、個体数では73.61%と37.49%であった。 捕食性天敵
は害
> >虫の増加に先駆け中性昆虫を補食することによって 増加した。
> >
> >甜菜夜蛾(Spodoptera exigua)に効果の高いBt菌(Wy-190)
> >牛 桂三 等 中国科学院武漢病毒研究所
> >甜菜夜蛾(Spodoptera exigua)に効果の高いBtの系統が発見された。市販のHD-1
系
> >統のBt菌と同じ性質を持つ面も多いが、培養物のLC50は0.25μl/ml で非常に
高
> >く、結晶体の大きさや形が異なり、SDS-PAGE電気泳動による蛋白も135kDtと65k
D付
> >近で差が見られた。いずれにせよ効果の高いBt剤が出現したことは実用化に希望
を持
> >たせる。
> >
> >Neutral insects =中性昆虫という単語を見たのは初めてです。日本での”ただの
> >虫”に相当するものだと思います。土着天敵利用技術には欠かせない要素です。
ただ
> >継続調査には分類や量的な評価について解決しなければならない問題が山積して
いる
> >と思います。
> >(高木感想)
>
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> 大野和朗  (Kazuro OHNO)
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> 宮崎大学農学部食料生産科学科 応用昆虫学研究室
> 電話&FAX 0985-58-7578 (直通です)
> e-mail: ohnok@plant.miyazaki-u.ac.jp(研究室)
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