[Date Prev][Date Next][Thread Prev][Thread Next][Date Index][Thread Index]

[IPM:1140] Re: 遮光処理について



野菜茶業研究所の浜村徹三です。

チリカブリダニとは30年以上のつきあいです。
生き物ですので、思うように防除してくれないことも
ありますが、今手に入る生物農薬の中でも、最も優れた
能力を持っている天敵資材と思います。
高温に弱いと言われますが、そうでもないデータもあります。

私がハウス条件を模して人工気象室ないで行った試験では、
最高気温を40℃(4時間)、それを挟んで35℃を2時間づつ、
その他の16時間を30℃として、イチゴの鉢植え上で20:1放飼
した結果、約2週間でハダニを制御できました。但し、湿度は
常に70%以上にしました。これは植物防疫51(7)、19〜23.
浜村(1997)「施設栽培イチゴにおけるチリカブリダニの
利用法」に紹介してあります。

以上のことから考えますと、最高気温が35℃の北海道の
施設内は、問題になるほどの高温とは思われません。
上手くいかない原因は他にあると思います。
いくつか考えられるものを上げてみます。
湿度;コンスタントに60%以下ですと、卵のふ化率、幼若虫の
発育率がゼロになり、増殖しません。しかし、自然条件では夜
は高湿度になりますので、問題になることはほとんどないと思います。
クーラーを使っている部屋内での飼育などで、注意が必要です。
農薬の残留;昔は結構ありました。現地圃場を借りての試験などで
要注意です。合ピレ、燐剤、イオウなど。
製剤の劣化;輸送中のアクシデントなど、以前はありました。気になる
場合は、リーフディスクにハダニと共存させて、産卵等をみます。
チリカブリダニとホストの相性;私はキュウリでチリを放飼したことが
ないので感じは判りませんが、ブドウなど大きい葉がまばらに着くような
植物ではいまいち効果が上がりにくいようにも思います。他の要因が
あるのかもしれませんが。
長くなりましたが、ヒントにでもなれば幸いです。

----- Original Message -----
From: "齊藤 美樹" <m-saito@agri.pref.hokkaido.jp>
To: <IPM@ml.affrc.go.jp>
Sent: Wednesday, February 12, 2003 11:57 AM
Subject: [IPM:1135] 遮光処理について


> はじめまして。
> 北海道立中央農業試験場の斉藤美樹と申します。
> 昨年の春から、施設栽培きゅうりのIPM技術確立のための
> 試験を行っています。どうぞよろしくお願いします。
>
> 今日は吹雪です。
> みなさんの県ではこの時期も試験を行っていらっしゃるのでしょう
> (むしろ今がメインなんでしょうか)。うらやましい限りです。
>
> ところで本題ですが
> チリカブリダニ等は暑さに弱いという話ですよね。
> 私たちの試験場ではこれまでに、カブリダニでハダニをなかなか抑えられず
> 夏の高温の影響かと考えまして
> ビニルハウスに遮光処理(光透過率60%)をして
> 高温時間を短くする、という試験をしました。
>
> 確かに大幅に高温時間は減りましたが・・・
> きゅうりの生育への影響や、
> ツヤコバチやアブラバチが暗いのを嫌って外にでていってしまわないかと思って
> 今年も続けるかどうか悩んでいます。
>
> はたしてそこまで温度を気にする必要があるでしょうか?
> ちなみに、遮光処理をしなくてもハウス内最高気温は35℃程度です。
> また、遮光処理により天敵に悪影響を与えるということはあるんでしょうか?
>
> どなたかご存じでしたら教えていただけませんか。
> よろしくお願いします。
>
> ****************
> 〒069-1395
> 北海道立中央農業試験場
> クリーン農業部総合防除科
> 斉藤美樹
> TEL 01238-9-2288-324
> FAX 01238-9-2060
> m-saito@agri.pref.hokkaido.jp
> ****************
>