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[IPM:422] はじめまして



IPMMLの皆様へ

前略、はじめまして、農水省蚕糸・昆虫農業技術研究所 野田隆志さんに紹介頂い
て、IPMMLに加わらせていただいています。これまで野田さんに変な質問ばかりして
困らせておりましたが...。

私は、岐阜で切りバラの栽培をしています。もっと早く自己紹介しなければと思いつ
つ、あまり変な質問をして皆さんにご迷惑をかけてもいけないと、読むだけの立場で
しばらく加わらせていただいていました。

 鷺坂さんが流通の立場からIPMの功利を述べられていたのを読んで、私は私なりの
IPMの意見を書いてもいいかなと、初めてメールを書いているところです。

 私は、1998年の10月の末から、合ピ、カーバメイト、有機リン、主な殺ダニ剤を
使わない栽培をしています。使っている農薬は、ノーモルト(IGR)、オサダン、ニッ
ソラン、アプロート(IGR)、チェスと殺菌剤のみです。
 この2年間を振り返って 最初の1年間はダニとの闘いでした。バラの栽培の特徴
として、栽培に休みがないことです。周年出荷しているためですが、冬もかなり高い
温度管理するのです。これが天敵を考えた時に、既存の農薬を使わなくなって、天敵
を使えるようになるためにリセットする時間がないのです。
 比較的残効性が高いこれまでの農薬をやめてもすぐに天敵は増えませんし、オサダ
ンは抵抗性がかなりついていたのか効きが悪く、それで、1999年の夏は、デンプン系
の農薬を何回も、合計十ウン万円分徹底的に散布しまいしたが、夏は結局密度を下げ
ることもでき
ませんでした。
 それでもそれまで使っていなかったニッソランをやることによってなんとか9月ま
でもたせ、そのあとにチリカブリダニの放飼を数回行ないました。
 1999年の10月末までは、ダニの被害がひどく、はっきりいって経済的にもかなり
損失だったのですが、それを乗り切って、1999年11月からは、今年(2000年)8月の始
めと終わりにカブリダニの繁殖が弱くなったのでニッソランとオサダンをそれぞれ1
回散布したのを除けば、ハダニが出てきたかなと思ってルーペで観察するとカブリダ
ニの仲間が発見できて、ハダニも増えるけれども天敵も増えて大きな被害が出ないう
ちにおさまるということを繰り返しています。したがって今年はチリカブリダニの放
飼もまったくしなくてすんでいます。
 
 ハダニ以外の害虫についてもそれぞれ成功不成功があるのですが、それは別の機会
にして、ハダニに関してはこの2年間の経験で多少の自信を得ています。
 独断的な意見になるかもしれませんが、導入、在来含めて天敵類が自然に活動する
ようになるのに3年くらいかかるのかもしれません。そして、私の理想は、どんな天
敵でもいいから、天敵類が居ついてくれて、害虫も低密度でいるけれど天敵も自然に
いるという栽培環境を作れないかというものです。私は経済学の用語を勝手にもって
きて『定常状態』と呼んでいますが、あんなに恐ろしかったハダニが一定の増減を自
然に繰り返しているのを見ていると、そんなに難しいことではないような気もしてく
るのです。(もちろん、生態的にカブリダニ類の繁殖が落ちる夏に影響の少ない薬剤
を散布する等の最小限のコントロールは必要でしょうが)そして、1998年のハダニの
大発生は、農薬を使わなくなったことの一種の禁断症状のようなものとも感じます。

 IPMを研究されている方たちからすると当たり前のことと思われるでしょうが、生
産現場で実際に見ていると『これはなに?』『なぜ』と思うことはしばしばありま
す。特に虫たちの生態に関してあまりに無知だと、三年目にさしかかって以前よりも
厚くなった昆虫層を見ながら感じてしまいます。機会がありましたら知恵をおかし願
いたいと思います。よろしくお願います。

高松バラ園芸
高松茂樹
rose@he.mirai.ne.jp