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[IPM:1036] Re: 蚊取り線香の安全性
藤澤 様、石塚様、IPMMLの皆様
岡山農試の永井です。
天然ピレトリン(除虫菊乳剤)やニームの天敵に対する影響評価
をナスやイネで試験したことがあるので、紹介します。
>
>
> > とりあえず、天敵農薬に対する影響くらいでいいから、データが欲
> > しいです。ピレスロイドが含まれていては影響が大きそうに思いま
> > した。
>
>
> ピレスロイドのような速効性で残効が殆どない剤は、使い方
> によってはむしろ天敵に影響を及ぼさないのではと思います。
> 圃場内の害虫の出具合を良く観察していて、最初にスポット
> 的に出たところにだけ散布すれば、回りの天敵等にはあまり
> 影響は出ないと思います。比較的毒性の低いものをまんべん
> 無く散布するよりはです。 影響評価も結構難しいですね。
(天然ピレトリンの天敵に対する影響評価)
露地ナスでヒメハナカメムシ(以下、ハナカメ)への天然ピレトリン(除虫
菊乳剤)の影響を調べた結果から考察すると、石塚さんが上記に書かれ
たとおりと思います。
トビイロウンカを使って天然ピレトリンの残効性についての室内試験では、
放飼後に散布すると92%、散布1時間後に放飼した時の死虫率は約80
%ありましたが、その次に放飼した5時間後では殺虫活性が無くなって
いました。野外では紫外線により分解が促進されるので、もっと速いと
思います。因みに、対象に用いた合成ピレスロイド剤は3日後でも80%
の死虫率がありました。
このように、天然ピレトリンは合成ピレスロイドに比較して残効は極め
て短いので、例え散布株のハナカメが多少死んだとしても、周囲から
天敵の供給がある露地ナスの場合、天敵の密度回復が速いので、
ミナミキイロのリサージェンスも観察されなかったです(除虫菊乳剤は
全くミナミキイロに効きませんが)。しかし、大面積での散布や連続散布、
周囲からの土着天敵の供給がない施設栽培での利用は危険と思います。
水稲のウンカ類(トビイロウンカとセジロウンカ)防除に7月下旬から
8月上旬に天然ピレトリン乳剤1,000倍液を散布した試験(1区10m
×10m=100m2、150㍑/10a)では、散布後に天敵類(クモ類、
ケシカタビロアメンボ、カマバチ)の密度が低下し、ウンカ類のリサー
ジェンスが起こりました。しかし、9〜10月に同様の散布を実施し
てもリサージェンスは観察されませんでした(夏バテで体力限界
のため天敵の調査は実施できず)。
(ニームの天敵への影響試験)
天然資材のニームを用いてナスの害虫と天敵に対する影響評価を
行ったことがあります。害虫はミナミキイロ、アブラムシ類、ハダニ類、
オンコナ、ハスモンの発生がありましたが、これら対する効果は認め
られませんでした。天敵に対しては、アブラバチ、ヒメカメノコテントウ
に対する悪影響は認められませんでしたが、ハナカメの密度が若干
低下したことを観察しています。但し、ニームは製剤により有効成分
Azadirachtinの含有率が異なります(Murray et al. (1990) J. Agric.
Food Chem. 38:1406-1411)ので、別の製剤を使った場合は結果が
異なってくると思います。
除虫菊乳剤のように農薬登録され有効成分量がハッキリしている
製剤は再現性があるので試験する意味があると思うのですが、
天然資材で有効成分量が不明であったり、不安定なものは、再現性
が疑問で、試験しても空しいこともあり、私は試験をしていません。
県内の天敵を利用する農家へは、石塚さんがIPM1033に書かれてい
るような理屈、「害虫も天敵もムシや。ムシがよりつかんもん撒いたら
天敵もおらんようなるかもしれんから、止めとき」と言って、使用しないよう
に言っています。また、農家は農薬と意識せず天然資材を用いることも
あるので、特に注意して聞き取りもしています。
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永井 一哉
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