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[IPM:1694] Re: (再送)越冬 虫写真



藤澤様
 皆様
生物研の野田です。越冬中のナミテントウを採集してきてアブラムシ防除に使う
と言うのは良い発想だと思いますが、以下の理由で現実的にはちょっと難しいか
も知れません。

ナミテントウは成虫で休眠して越冬します。休眠中は摂食量が減って呼吸量が低
くなり、卵巣はほとんど発達しません。地域によって多少違いはありますが大体
10月中旬頃から翌年4月中旬頃までが休眠期間です。1月下旬に野外で越冬して
いる成虫を25℃短日条件に移す実験を行った報告があるのですが、2週間後でも
卵巣は発達しなかったとのことです。その際に、人為的に休眠を破ることが出来
るある種の薬品を体に塗ってやると13日後には産卵が始まったのですが、この薬
品は一般人が簡単に手に入れられる物ではありません。この論文には摂食量につ
いての記述がありませんが、卵巣が発達しなかったことから、摂食量が増えたと
は考えにくいです。植食性の昆虫だと1月下旬には休眠から覚めている場合があ
るのですが(例えばアオクサカメムシ)、捕食性昆虫の休眠は餌との同調性の関
係で、相当深いのかも知れませんね。ただし、2週間後はだめでも1ヶ月後にど
うなるかはやってみないと分かりません。1月に越冬場所から採集した虫を加温
することで、自然条件下では4月中旬に始まる摂食・繁殖活動を早めに開始させ
ることは可能かも知れません。自分で採集してきた天敵をそのまま防除に使うこ
とは特定農薬として認められているので、とりあえず少数放してみて様子をみて
はどうでしょう。最初は越冬場所を求めて隙間に潜り込むかも知れませんが、そ
の後どうするかは??

上記はナミテントウについての話です。ナナホシテントウは冬は休眠していない
ので、温度を上げれば直ちに摂食量が増えて繁殖を開始します。しかし、越冬場
所が河川敷の草地のような開けた場所で、集団を形成していないので採集が難し
いですね。

Shizuo FUJISAWA wrote:

>野田様、IPM−MLの皆様
> 苺農家の藤澤です
>
>野田さんのタイリクの写真を拝見した頃、
>実は苺を買ってもらっているレストランで聞いた話です。
>「この時期になると毎年、虫が飛んできて困るんです。」
>「テントウムシの星が二つのだけれど、なんとかならないかな?」
>え、そんな事あるのと、思っていたのですが。
>
>「え、それって天敵昆虫なので売れるかも知れないよ。」
>なんて無責任な話をしてしまって、
>そして今日、続きの話がありました。
>「テントウムシが家の隅に固まっているのだけれど・・・4ヵ所に集まっているよ。」
>と聞いたのですが。
>
>そういうことって、あるのだなあと、思いました。
>ここで、どうしたら、これを天敵利用できるのでしょうか?
>
>越冬してる昆虫を、少し早く目覚めさせて、利用出来ない物でしょう?
>
>
>(静岡県三島市 苺農家 藤澤 鎭生 sizuo@xxxxxxxxxxx )
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