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[IPM:309] Re 畑297 ニーム& 加藤306木酢& 石井308 有機農業



畑さん297,加藤さん306,石井さん308,IPMMLのみなさん

羽曳野田中寛です。

At 06:35 00/10/25 +0900, 畑297 wrote:
>インドせんだん(ニーム)の木からつくられた、ニーモイル(Neemoil)という、
>殺虫剤の情報を知りたいのです。
$$$ ニームオイルの殺虫主成分はアザディラクチンという物質です。農薬登録の
問題から,現時点では作物で使用できません。現在,アザディラクチンを精製した
アザチン水和剤を丸紅が日本植物防疫協会委託試験にかけています。毒性,
発癌性,作物残留,防除効果試験等をクリアーし,農薬登録をした時点で,
農薬として使用できるようになります。

$$$ いま,「人工物は危険,自然物は安全」という神話,というか,思いこみが
日本中に流布しています。木酢液にはホルマリン,各種フェノール類,(精製の
悪いものには)タール,その他の物質が含まれています。ホルマリンもタールも
有名な発癌性物質です。一方,農薬の場合,発癌性の疑いが少しでもあれば
登録されません。・・・こういう話を去年,主婦の友園芸ガイドに書いたら,編集部に
問い合わせが殺到しました。知らなかった,納得,という意見と,木酢を悪く言う
のはけしからん(笑),というのと・・・。ついでながら,私はこれまで木酢液の
テストをコナガ,オンシツコナジラミなどを使って何度もやっています。いずれも
水とあまり変わらない,という結果でした。病害には効く場合はあるようですが,
実はホルマリンによる効果です。

$$$ 合成ピレスロイド剤(アディオン,トレボン,ロディーなど)は知っておられると
思います。除虫菊の殺虫主成分であるピレトリンの類縁化合物を研究・精製して,
虫に対する効果が高く,毒性が低く,発癌性のない(もっと深い議論はありますが,
ここでは省略)ものが殺虫剤として農薬登録されたのです。昔の農薬取締法は
「効かない悪質な農薬を販売させない」ために作られたものであり,当時の分析
レベルから,登録にあたって毒性の審査が現在ほど厳しくありませんでした。
ですから,現在,除虫菊乳剤の登録を試みたら,さまざまな不純物の毒性チェック
などで費用がかかり過ぎ(あるいは不純物の発癌性などでひっかかり),市場に
出てこないだろうと予想されます。ニームオイルも(詳しい事情までは知りませんが)
同じ経緯をたどって,現在殺虫主成分の精製物が農薬登録試験にかけられて
いると推察されます。除虫菊とニームの運命の違いは,ただただ,時代が違った
から・・・,です。

$$$ その意味で,デリス(強烈な魚毒性があり,不純物に何が入っているか
わからない)などが大手を振って有機栽培用に使用可,というのは,害虫担当者
なら誰しも痛感している矛盾です。昔に農薬登録を取ってしまったから,
そのまま・・・(嘆)。有機農産物ガイドラインにはこのようなウラがあることを
有機栽培農家のみなさんに知っておいてほしいと思います。

$$$ なお,農薬取締法では,「農作物病害虫防除」のために使用する資材は
全て農薬であり,農薬登録が必要です。天敵さえも例外でなく,そのために
天敵の登録のために大きな費用がかかっています(矛盾きわまりない!)。
木酢液も個人輸入のニームオイルも椿油粕(スクミリンゴガイに効果があるが,
魚毒性が非常に高く,ヘタすると下流でサカナが浮く)も海藻エキスも,効果や
安全性等が確認されていない無登録農薬なのです。これでも,「人工物は
危険,自然物は安全」という神話をそのまま鵜呑みにされますか・・・。

$$$ ・・・とまあ,久しぶりに血が上った(笑)書き方をしてしまいました。ご容赦。

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田中 寛 (たなか ひろし)
大阪府立農林技術センター病虫室(主任研究員)
(兼)大阪府立大学連携大学院(客員教授)
〒583-0862 羽曳野市尺度442
Phone: 0729-58-6551(内232)
Fax: 0729-56-9691
E-mail: hiroshi-habikino.tanaka@nifty.ne.jp
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