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[IPM:2034] Re: 免疫タイプ



藤澤様

植物にも、動物とは仕組みが異なりますが免疫的な機構(抵抗性)があって、 病原体による感染や害虫による食害を防いでいます。 野生植物は進化の過程でこうした仕組みを発達させており、病気や害虫などに よる被害を受けにくくしています。 一方、栽培されている農作物は、栽培のし易さや食味、収量などを優先して育 成されているため、抵抗性が弱くなり、病気や害虫の被害を受けやすくなっています。

ウイルス病に対する免疫的な抵抗性というのは、病原ウイルスを接種しても植 物の体内で増殖が認められず、ウイルスが検出されないような性質を言います。
こうした強い抵抗性は、色々な作物のウイルス病に対して発見されています。

ウイルス病に対する抵抗性は野生系統の植物に存在する場合が多く、育種家は 色々な野生系統と栽培品種を交配しながら抵抗性品種を育成します。 ただし、こうした強い抵抗性品種が育成されても、ウイルスが変異して抵抗性 品種にも感染できる系統に変わってしまうと、効果が無くなってしまいます。 ウイルスの感染を抑える品種が広く栽培されれば、こうした品種にも感染でき るようなウイルス変異株が相対的に有利になりますから、抵抗性品種を侵すよ うな変異系統が進化することは容易に予想できます。

こうした話は、どこかで聞いたことがあると思いませんか?
殺虫剤抵抗性の害虫が出現するメカニズムと同じなのです。
ウイルス病に対する抵抗性や害虫を殺す殺虫剤など、一つだけの強力な防除手 段に依存すると、それを乗り越える系統(ウイルス変異株や殺虫剤抵抗性害 虫)が出現しやすくなります。

新しいウイルス変異株や殺虫剤抵抗性害虫の出現を防ぐためにも、一つの防除 手段に過度に依存せず、様々な防除方法を組み合わせて病害虫の発生を管理す る総合防除(IPM)の取り組みが重要だと考えています。

本多健一郎@野菜茶研

At 16:34 09/09/13, you wrote:
本多さん、いつもありがとうございます。
 苺農家の藤澤です。

免疫タイプの作物や品種って、どんなものがあるのだろうか? と思いました。
弱毒ウイルスを接種したものとか、免疫性のある遺伝子を見つけて組み換えた
ものとか、免疫って、もともと植物にはない機能かな?
意外と、より動物に近いものとして敬遠されがちな感じがあるのでは?
などと思いました。
品種改良に許されやすいものは、耐病性タイプくらいなのかな、と思いました。

農家の知識を深めるために、このあたりの事も知りたいと思いました。
自分の知識は、古く浅いタイプと思っています。
いろいろ教えてください。


(静岡県三島市 苺農家 藤澤 鎭生 )

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