[Date Prev][Date Next][Thread Prev][Thread Next][Date Index][Thread Index]

[IPM:2041] Re: 免疫タイプ



藤澤様

TYLCVによるトマト黄化葉巻病の発生は歴史的には新しく、1940年代からです。
トマトはコロンブスがアメリカ大陸に到達した後、唐辛子などとともにヨーロ ッパにもたらされて主要な農作物となりました。

トマト黄化葉巻病が最初に発生した場所は、中東のイスラエルだと言われています。
露地栽培しているトマトにタバココナジラミ(バイオタイプB)が大発生し、 それと同時にこの病気が蔓延したそうです。 今でもイスラエルでは白い霧のようにコナジラミが発生し、地平線がかすんで しまうことがあると聞きました。
(写真を見ました。山登りした時に見る霧のようでした)

TYLCVはイスラエル付近でナス科の野生植物に感染する土着のウイルスだったようです。
同じ場所でトマトを大規模に栽培した結果、コナジラミによってトマトに媒介 され、激しい病気を引き起こしたと考えられます。 激しい病気になって植物が枯れてしまうとウイルスも滅んでしまうので、長い 進化の過程では植物とウイルスは共存するようになり、病徴も穏やかになる場 合が多いです。 トマトとTYLCVの出会いは比較的最近であり、その分病気としてはまだ激しいま まであると考えられます。

TYLCVはイスラエル原産ですが、世界中でトマトの黄化葉巻病を引き起こしてい る病原ウイルスには、各地の土着ウイルスも多いです。 つまり、TYLCVに近縁のウイルスがあちこちにいて、トマトを栽培するとコナジ ラミによって媒介され、黄化葉巻病を引き起こす訳です。 ただし、日本で蔓延している黄化葉巻病の病原ウイルスは、遺伝子解析の結果 イスラエル由来のTYLCVと考えられています。

土着のウイルスには、TYLCVに比べて感染力が弱いものもあり、激しく流行しな い場合もあります。
しかし、TYLCVが侵入すると、これが蔓延して重大な被害をもたらします。
TYLCVが蔓延する前に、タバココナジラミのバイオタイプBやQが侵入し、大発 生するのが通例です。
まずは媒介虫が侵入し、その後でウイルスが流行するというパターンです。
この世界的な流行は、まだ継続しています。

加工用トマトを露地栽培している国では、栽培品種を病徴が出にくいTYLCV抵抗 性品種に切り替えてしまったところもあります(新ウイルス系統発生のリスク は残ります)。 地中海沿岸のトマト生産国では、施設でネットを展張してコナジラミを防除し ながら生産するか、露地で抵抗性品種を栽培するというのが主流のようです。 米国のフロリダで視察した露地トマト圃場では、見渡す限りの広い圃場を大型 トラクターが走行し、殺虫剤を撒いていました。 フロリダは暖かいので、冬でもタバココナジラミが露地圃場に生息し、黄化葉 巻病も発生していました。 この当時は米国でまだバイオタイプQが蔓延していなかったので(西海岸に侵 入したばかりでした)、Qが拡がったら薬剤による防除は困難になると思います。

TYLCV以外にも、土着のウイルスでタバココナジラミによって流行し始めた重要 な病原ウイルスが、海外で幾つか報告されています。
日本にはまだ侵入していませんが、要注意です。

本多健一郎@野菜茶研

At 20:20 09/09/17, you wrote:
大野さん、ありがとうございます。
 苺農家の藤澤です。

先生のメールを読んでいて、スペインのところで思いました。
トマトって海外では、日本以上に重要な作物ですね。
TYLCVの被害が発生したらトマトの食料難が発生してしまうくらいなものでは
ないのか? と思いました。

TYLCVの発生地というか原種みたいなウイルスが存在する国には、多くの型の
TYLCVがあってトマトに被害の少ないTYLCVというものが、ないものかな?
世界で最初に発生したTYLCVのトマト栽培地域・国ってどうなっているので
しょうか?
意外とTYLCVを知らずに克服していたりする事がないものでしょうか?

そんな期待がうまれました。


(静岡県三島市 苺農家 藤澤 鎭生)

--------------------------------------------------
Ken-ichiro Honda
Vegetable Pest Management Research Team
National Institute of Vegetable and Tea Science
National Agriculture and Food Research Organization

360 Kusawa, Ano-cho, Tsu-city, Mie 514-2392 JAPAN
Tel: 059-268-4644, Fax: 059-268-1339
E-mail: khonda@xxxxxxxxxxx
--------------------------------------------------